「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第46回
浅草に行ったら 何を食べよう (その2)

前述の「ゆたか」同様に「松むら」もロースカツ。
植物油を使用するため、上品で軽やかな揚げ上がり。
塩でも醤油でもソースでも、それぞれに相性がよく、
ヴァリエーションを楽しめる。
ただし、この店はほかのメニューに浮気をしないこと。
ヒレカツは熱の通しすぎで、軽い脱水症状を起こしている。

御三家しんがりの「すぎ田」は
浅草から都心方面に南下した蔵前にある。
とは言っても、このあたりまでは大浅草圏内。
やはりこの店もロースカツがイチ推し。
品書きには、ロースとんかつと表記されている。
油の温度の違う2つの鍋を使って、ジックリと揚げられ、
豚肉の穏やかな旨みが打ち寄せる理想的なとんかつだ。
ここはロースばかりか、ヒレとんかつもなかなか。
肉汁を閉じ込めて、パサつくことなどけっしてない。
ロースとヒレの両方揃うポークソテー、
海老フライにオムレツも試してほしいメニュー。
ごはんと豚汁にも手抜かりがなく、
どこを攻めても弱点の見つからない優良店である。

浅草では、とんかつと並んで水準の高いのがロシア料理。
ロシア料理店を数軒抱える渋谷との差は大きく、
もちろん浅草が上位で、老舗「マノス」が頂点に立っている。
この店の必食科目はボルシチ。
日本人向けにアレンジされていない本格派だ。
キャラウェイの香る自家製ライ麦パンも
必ずお替わりがしたくなるほどのもの。
添えられるハムのムースはささやかな名品。
パンがすすむので食べ過ぎに要注意。
ウォッカとは相性抜群の相思相愛、
にしんの酢漬け・セリョートカはロシア人の大好物。
日本人の好む江戸前鮨の華・小肌を連想させる。
新鮮ないわしの香草焼きは
桜餅に似た香りのズブロッカと合わせたい。
麺状のマッシュドポテトで海老をくるみ、
油で揚げたケセランという料理の人気も高い。
丸々1本の海老入り蟹クリームコロッケは
海老と蟹のコラボレーション。
エビガニコロッケに改名したらいかがだろう。
食欲をそそるネーミングとは言えないか。

「マノス」の支店を料理人がそのまま引き継ぎ、
新規に開いた店が「ボナフェスタ」。
雰囲気はよりカジュアルだが、料理はほとんど変わらない。
ただし、キャベツロールはこちらのほうが重たい。
活けロブスターの二色ソースはプリプリの食感が快く、
丁寧なソース作りはもはやフランス料理の領域だ。
バターのコクに酸味を効かせたブール・ブラン、
甲殻類の風味を凝縮させたアルモリケンヌ、
ともにクラシックなソースが高級食材を引き立てている。
ウォッカやズブロッカの豊富な品揃えに
調子に乗ってグイグイやると、翌朝が大変だ。


        =つづく=


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