「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第48回
人生を決めた「太陽がいっぱい」

ルネ・クレマンがメガホンをとり、
アラン・ドロンが主役を演じた「太陽がいっぱい」。
この映画をリバイバル・ロードショーで観たのは
中学三年生、14歳のときのこと。
それがその後の自分の人生を決めることになる。

9月4日付け日経夕刊の「こころの玉手箱」。
作家の高樹のぶ子が「太陽がいっぱい」について書いている。
製作された翌年に、奇しくも同じ14歳で観た彼女も
この映画に多大な影響を受けたのだ。
「世の中にこんなに美しい男がいたのか!」という彼女。
その気持ち、よく判る。
トム・クルーズやジョニー・デップが
逆立ちしてもかなわない、底知れぬ神秘的な美貌を
たたえているものね、ドロンは。

ボクの場合はドロンの魅力もさることながら
映像の美しさ、カメラワークのシャープさに圧倒された。
もちろんP・ハイスミスの原作による
ストーリーもすばらしい。ラストシーンが殊更に見事。
あのとき以来、ヨーロッパ、
特にイタリア・フランスに対する憧れは募るばかり。
フランス文学を志した大学も中退して
ヨーロッパに住み着いたりもしたのだ。

長かったニューヨーク駐在時代には
バハマ・ジャマイカ・プエルトリコあたりに
よく出かけたが、地中海を知るものにとって
つまらないカリブ海には何の魅力も感じない。
両者には美術館と遊園地に等しいギャップがある。

昨日の今日で「太陽がいっぱい」を観直す時間は
なかったけれど、記憶が確かならば
この映画には食事のシーンが4度登場する。
ヨットのキャビンでの平目のムニエル(そう見えた)、
レストランでのトマトソースのスパゲッティ、
アパートでの地鶏のロースト。
それに食事とはいいがたいが、
ヨットの甲板でのサラミとパン。

上記の食べものは、たまたまみな好物。
白身魚のムニエルは特に好きだ。
平目はもとより、舌平目・かれい・すずき・はた。
これを白ではなく、赤ワインとともに楽しむ。
サカナ料理に赤というと、007シリーズの最高傑作
「ロシアより愛をこめて」の食堂車を思い出す。
チキンは小分けにして串焼きにする焼き鳥よりも
ひな鳥を1羽丸ごとローストしたのが好み。
滅多に食べないステーキも高級鉄板焼きのように
サイコロ状のものよりも、ナイフ・フォークを使いたい。
日本人は何でもかんでも小さく切ってしまうが、
やはり箸を使っていないと、
安心して食事のできない民族なのだろう。


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2006年9月6日(水)

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