「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第50回
スペインバルに 当たりナシ

スペインバルのブームが到来して久しい。
自分のホームグラウンドの銀座にも雨後の竹の子状態。
さすがにもう1つのホームの浅草ではまだ見かけず、
「フレスカ」という古いスペイン料理屋が1軒あるのみだ。

気軽に酒とタパスだけでも利用できるから、使い勝手はいい。
しかし「これは!」という店に遭遇したためしがないのは
どうしたことだろう。美味しい思いをしたこともない。

麻布十番は鳥居坂下の「バル・レストランテ・ミヤカワ」。
推奨する友人が数人、総じて巷の評判もよろしく、
「行かなきゃいけない有名店リスト」の上位に位置していた。
2週間ほど前に予約を入れておき、訪れたのはつい3日前。
その夜は相方がトラブルに見舞われドタキャン。
独りでの食事となってテーブルからカウンターに移動する。

ビールはスペインのクルスカンポと迷ったが、
日中は30度超えの真夏日のこと、一番搾りの生にする。
2人であれば注文したであろう
リベラ・デル・デュエーロ産赤ワインの
ペスケラ・リゼルヴァ‘01年は10500円の値付けだ。

もともと小食の上に孤軍奮闘ではどうにもならない。
守備的に構え、タパス中心で攻めてゆく。
最初は大好物のボケロネス。片口いわしの酢漬けだ。
ひたひたのオリーヴ油に並んだ小柄ないわしは
酢がかなりキツい。ガーリックも相当に効いている。
サカナの生食に慣れていないスペイン人は
完全に生臭みを消してやらないと、食べられないものだが、
それにしてもこれは、〆すぎのトンガリすぎだ。

サーモンのマリネで巻いた蛸ポテトは
あまりスペイン的でもなく、どちらかと言うと
創作居酒屋の小ジャレたおつまみといった感じ。
本日の小魚のフリットは、小いわしと蛸の吸盤の盛り合わせ。
好きな小いわしも、このレベルでは不満が生じる。
瀬戸内の居酒屋、博多の屋台で食べるものにはほど遠い。

お次はアンダルシア風のガスパーチョ。
おなじみの冷たいスープは、皿に盛られた具の上から
ドロリとネクター状のスープがかけ回される。
具は、トマト・きゅうり・ピーマン・セルフィーユに
ゆで玉子の黄身と白身、クルトン状のパン。
これはスープというより、飲むサラダというのが的確な表現。
香辛料のクミンが主張するため、スペイン以上に
メキシコを感じさせ、他店のものよりずっと個性的。

血糖値の上がった脳から胃袋へ
「もうやめておけ!」の伝令が飛び、
イベリコ豚や仔羊の主菜とは、戦わずして無条件降伏。
パエジャに至っては、ハナからあきらめるしか手立てがない。
常々疑問に思うのだが、二人前からの注文となるパエジャ、
あれはどうにかしていただけませんかねぇ。
中華料理屋で「炒飯は二人前から」と言われたら
間違いなく、ケツをまくる客が続出するでしょうよ。

 
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2006年9月8日(金)

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