「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第51回
昔の駅弁が生きていた

夏の日に、静岡県の用宗海岸にて海水浴。
用宗とはあまり聞きなれない地名だが、
静岡と焼津の中間あたり、駿河湾に面して
しらすの水揚げ量では全国有数の漁港を有している。

半日海で遊び、夜は清水に出向き「末廣鮨」で夕食。
南まぐろの品揃えで有名な店ながら、
根っからのまぐろ好きでもないので
赤身と背とろを少しずつ。あとは平目と車海老をつまみ、
にぎりは、小肌・かつお・穴子といったところ。
赤身よりよかった背とろも1カンにぎってもらった。

静岡市内に舞い戻り、青葉おでん街の「愛ちゃん」へ。
静岡のおでんは、真っ黒なでんつゆが特徴。
大根・白滝・揚げボールで、芋焼酎のロックを。
洗練された銀座のおでん屋とはまったく趣きの違う
地方色に触れるのも、旅空の下の大きな楽しみだ。

駅前のホテルへ投宿して、その夜はグッスリ。
翌朝の目覚めは当然のようにスッキリ。
滅多に取らない朝食は、しらすと桜海老のオムレツ・
小松菜と油揚げの煮びたし・野沢菜とわさび漬け・
なめことわかめの味噌汁で、ごはんを軽く1膳。
地元の名物の豪華な競演を味わえる
オムレツを看過するワケにはいかなかった。

昼は行列を見たがため、気になりだした
「霧下戸隠」という市内のそば屋さん。
小ぶりのきす天ぷらが美味しく、もりそばはそこそこ。
そばそのものよりも、庶民的な雰囲気の漂う店内が
人気の秘密なのかもしれない。

前日、静岡駅に到着したときにホームから見た
大きな看板にも惹かれるものがあった。
「東海軒」とは中華料理か?洋食か?
はたまた駅前にありがちな「何でも食堂」なのか?
店先に立って、胸がときめいた。
なんとまぁ、レトロでローカルな弁当屋さんだこと。
居並んだ多種多彩の駅弁に欣喜雀躍、即座に決断。
今夜の晩メシに買い求めよう。
いやいや、帰りの新幹線で、これを肴に缶ビールだ。

名代は元祖鯛めしと聞くが、鯛めしではつまみにならない。
みかんの皮の炊き込みごはんにも後ろ髪を引かれつつ、
幕の内弁当に白羽の矢。やはり色とりどりのおかずには弱い。
多色刷りの包装紙も食欲を煽り立てる。

車内で紐解くと、何やら懐かしい香り。その内容は
海老フライ・チキンかつ・さば塩焼き・肉団子・玉子焼き・
かまぼこ・わさび漬け・山菜漬け・梅干し・ごま振りごはん。
いいですねぇ、こういうの。懐かしの香りの元は揚げものだ。
小学校に上がる直前、故あって長野―上野間を
列車で何度も往復したあの頃。子どもにはご馳走だった
駅弁の味がそのまま変わらず、静岡に生きていた。
目がしらが熱くなるのも無理はない。しまいにゃ涙まで、、、
おっと、それは、わさび漬けが効いたのでした。

 
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2006年9月11日(月)

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