「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第52回
天ばらを ご存知ですか?

週に1度は暖簾をくぐる鮨屋に比べ、
天ぷら屋を訪れる機会はずいぶん少ない。
繁華街を歩いていて、あまり見かけないのも一因だ。
それでも浅草や日本橋のように、
うなぎ屋の多い街では天ぷら屋の数もグンと増える。
古くから隅田川・東京湾と
水路で結ばれていたエリアだからこそか。。

高級天ぷら店は鮨店のようにサッと入って
サッと引き上げることができないぶん、使い勝手が悪い。
その点、下町の天ぷら屋は気軽に飛び込み、
気楽にお好みで揚げてもらえるのがありがたい。
きすや穴子の天ぷらで酒を飲んだあと、
隣りの鮨屋に流れて、にぎり鮨なんていう
離れ業は下町ならではの楽しみだろう。

昼は酒を飲まないから、もっぱら天丼か天ぷら定食。
割合は8:2くらいで天丼が多い。
夜にごはん粒を食べることが滅多にないため、
天ぷらはともかく、天丼はハナからムリ。
コースの締めの小天丼では食べた気がしないし、
ズドンと食べ応えのある天丼とは昼限定のお付き合いだ。

コレド日本橋の「天ぷら魚新」は真向かいの
とんかつ屋「平田牧場」とともに、ちょくちょく利用する店。
11時の開店が、早めの昼メシにうってつけの上、
穴子天丼・かき揚げ丼などの品揃えもうれしい。
特製天丼(1700円)は、海老2尾・蓮根・しいたけ・
小海老かき揚げ入り。魚介は海老類だけというのが寂しく、
2尾の海老がイマイチだ。代わりにサカナが1尾ほしい。
かぼちゃ・さつま芋などモッコリしたのを使わないのはいい。
芋好きのOLさんには不評でも、
あれでカサ上げするのは無粋千万、江戸前天丼とは呼べない。

その天丼よりも、オススメなのが天ばら(1800円)。
閉店した六本木時代から、ずっとこの店の名物なのだ。
現在では、丸ビル店と、このコレド店で食べられる。
名前の由来は、かき揚げをバラしてから
ごはんと混ぜ合わせ、塩を振って、いただくから。

ここの天ばらは、白胡麻を散らしたごはんの上に、
小海老といかのかき揚げをドンと乗せたもの。
まず塩で半分ほど食べすすみ、
残りは生醤油をチョロリとたらして食べ終えるのが好み。
ドンブリ鉢1つで2度美味しい。
かき揚げ自体、それほど傑出したものではないが、
つややかなごはんが抜群だから、箸がすすむこと請け合い。

しじみの赤だしと香の物もおざなりではなく、
お茶も熱いのと、冷たいのとの両面(リャンメン)待ち。
この天ばらに、緑茶でもほうじ茶でも熱いお茶を
かけ回してやれば、一瞬にして天茶漬けに早代わりだ。
お茶はいいけれど、やってはいけないのが
赤だしをブッカケること。これはみっともないし、
第一お里が知れるというものだ。

 
←前回記事へ

2006年9月12日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ