「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第62回
自由が丘に香る風  その1

下北沢ほどではないが、
自由が丘という街は、あまり好きではない。
別段、悪い思い出や、恨みつらみがあるワケではない。
若者の街に自分の居場所を探せぬ、ということでもない。
「それじゃ一体、何が気に入らないんだい?」
と問われれば、まず最初に挙げたいのが、街の歩きにくさ。
自由が丘も下北沢も、とにかく歩きにくい。
なにせ、歩道らしい歩道がないのだもの。
「脚で綴ったダイアリー」を
書き続ける身にとって、
歩行者冷遇タウンとの相性はよかろうハズがない。

ニューヨークに住んでいた頃は
クルマのない生活など考えられなかった。
それが帰国後、クルマとの付き合いは
スッパリあきらめた。
毎晩のように外で酒を飲んでいては
クルマを運転するヒマがない。
たとえヒマがあっても、乗れば犯罪だ。

ことのついでに、クルマで出かける
ゴルフもやめてしまった。
東京近郊でプレイしようものなら、
丸一日つぶされてしまう。
それがもったいなくて、クラブを置いた。
ニューヨーク時代の週末は、昼過ぎにはホールアウト。
ニュージャージーからマンハッタンに舞い戻り、
行きつけの雀荘で深夜まで麻雀というのが
お決まりのコース。。
郷に入れば郷に従え、とは言うものの
世界の二大都市の間を移動したというのに
かくも生活が激変しようとは!

歩きにくさに加えて、この2つの街は
それなりの活気と潜在能力を備えているくせに
優良な飲食店が数少ない。
自由が丘を眺めてみると
フレンチの「ラ・ビュット・ボワゼ」、
とんかつの「丸栄」くらいしか
印象に残る店が思い浮かばない。

ほかには、鮨の「羽生」と「鮨幸」、
うなぎの「八沢川」、居酒屋の「金田」、
フレンチの「プティ・マルシェ」あたりがいい。
残念ながら、鮨の「兵衛」と
フレンチの「タンドロン」、
そして陳健一氏推奨のハンガリー料理店
「キッチン・カントリー」は、いささか期待はずれだった。

食の不毛地帯とまでは言わないが、
けっして肥沃地帯とも言えない自由が丘で
「かなりイケてるから試してみて」――友人の言葉に
心動かされ、小雨そぼ降る中を訪れた1軒の中華料理店。
店の名を「香風」という。

           =つづく=

 
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2006年9月26日(火)

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