「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第69回
築地で鮨は 食べません

築地市場の鮨屋に入ることは年間数えるほど。
殊に場外では皆無に等しく
たまに訪れるのは決まって場内。
真っ当な鮨屋さんは場内に集中しているからだ。

それでも朝っぱらから
生モノを口にするのは好きではない。
和朝食には、塩じゃけか鯵のひらきだろう。
目刺しや鰯の味醂干しもいいものだ。
けれど刺身はイヤ、鮨もありがたくない。

築地の鮨屋は鮮度が売り物、
江戸前シゴトで勝負するタイプは少ない。
オマケに長い行列のせいで、気力も萎える。
一昔前にこんなことはなかった。
築地に関するグルメ雑誌やグルメ本、
海外で出版される東京のガイドブックに紹介され、
いつの間にか都内屈指の観光地と化してしまった。
内外からの観光客が鮨屋に殺到するものだから
鮨屋に鞍替えする定食屋を何軒見たことだろう。

市場のプロは築地で鮨を食べない。
行列に並ぶ時間を惜しむからではなく、
定食・洋食・中華のたぐいが好きなのだ。
とりわけレベルの高い定食は素人衆にもオススメ。

煮魚・焼き魚の品揃え豊富な「かとう」。
名物婆ちゃんがサービスを
その娘さん、といってもオバちゃんが調理を
それぞれ担当している。
最近は客アシが急激に伸びてアルバイトかしら、
若い女性が婆ちゃんを補佐している。

9月最後の週末のお昼前。
壁の品書きに、好物の蝦蛄わさを見つけ、
ついついビールを注文。銘柄はキリンラガー。
蝦蛄わさのわさは、残念ながら粉わさびだが、
化調を感じさせるニセわさよりはマシ。

上新香も「味の素を掛けないで」とお願い。
なす・きゅうり・かぶのトリオでくるぬか漬けの
漬かり具合は浅め。好みにピタリとはまって
築地市場ベストのぬか漬けの折り紙をつけたい。

主役は、なめたかれいの煮付け。
ほどよい脂のノリに、あふれるコラーゲン。
かれいの煮付けは、なめたと目板が双璧だ。
濃い目の煮汁がいかにも江戸っ子好み。
関西風の上品な味付けは
肉体労働の場にふさわしくない。
サイドの豆腐も茶色に色づいて、恰好の箸休め。
ビールを2本空けてしまい、ごはん粒をパスしたが、
このなめたかれい煮つけ定食、
小鉢・味噌汁・新香・ごはんが付いて金1200円也。
美味しいですヨ。

 
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2006年10月5日(木)

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