「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第73回
大手を振って 靖国参拝 (その2)

夕食のついでに靖国神社の参拝とは
不謹慎のそしりを免れぬやも知れぬが、
メニューの組み立ては熱気を帯びてきた。
10分ほどで決議案がまとまる。

前菜は、赤座海老と角長海老と白アスパラのグリル。
次が主菜で、ひげ鱈丸一匹のカルトッチョ(紙包み焼き)。
締めのパスタは2種類。
手打ちのビゴリは、じんどういかとその墨と肝のソース。
同じく手打ちのパッパルデッレは、栗入り猪肉のラグー。

フランス産の鳩や鴨にも惹かれるものの
そんなに食べられるものではない。
せっかくのイタリアワインの王様・バローロだが、
骨付き仔羊にも目をつぶらざるをえなかった。
ツレのアイデアで、生のフルーツトマトと
イチヂクを料理が運ばれるまでの継ぎとして
フォカッチャとともにいただいた。

水深の深い駿河湾の名物・赤座海老は
シットリとした焼き上がりに、ほのかな甘み。
甘海老ほどのサイズの角長海老は頭さえ外せば
味噌もシッポもパクリとやれて、滋味タップリ。
初めて食べる小さな海老に感心。
白アスパラにはもともとそれほど魅力を感じず、
アーティチョークを主張したが、これは論争に敗れた。
でもシンプルな焼きアスパラも悪くない。

日本のイタリアンにカルパッチョは
すっかり定着した感がある。
それに引き換えカルトッチョはほとんど忘却の彼方。
手間ひまを惜しむ造り手側に責任がありそうだ。
テーブル上で包んだ紙を切り開くと
真っ先に香草のタイムが鼻腔を刺激する。
追いかけるように、様々な茸たちと
ひげ鱈のエキスの香りが立ち上がる。
グリルやヴァポーレ(蒸し焼き)もいいが、
カルトッチョはもっと見直されてよい料理法。
少なくともアクアパッツァより好みだ。

身肉の柔らかなじんどういかは
墨と肝のコク味のおかげで、濃厚なソースに。
ただし、いか本体はやや火の通しすぎ。
胴体よりもゲソのほうが歯ざわりがいい。
手打ちのビゴリはシコシコの太打ち。
形状は長崎のチャンポン麺に似ている。

ラストのパッパルデッレは幅広のリボンパスタ。
猪と栗のコンビは、イベリコ豚とどんぐりを連想させる。
パスタはそれぞれにポーションが大きく、
最後の皿は食べきれなかった。例によってドルチェはパス。
エスプレッソで仕上げて、本日のお開き。
夜空に浮かび上がる靖国の大鳥居を横目に
九段の坂を下りてゆく。

 
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2006年10月11日(水)

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