「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第86回
長嶋夫妻の思い出  (その2)

あこがれの人、長嶋監督のディナー・サービスの
栄誉に浴したのは、正確な日付は定かでないが、
1978年か‘79年のクリスマス、
あるいはイヴかイヴイヴだったことは確かだ。
おそらく‘79年であったろう。
ところは東京タワーにほど近いホテルの大宴会場。
五木ひろしのクリスマス・ディナーショーだった。

最近のディナーショーは10人も座れる大テーブルで
他の客との相席もザラ、昔はそんなことは許されなかった。
カップル席を4卓に、4人掛けを1卓、
計12名を受け持ったと、おぼろげに記憶している。
その中に、当時ジャイアンツを指揮していた
ミスターとご夫人がおられたワケだ。

うれしさが先に立ってしまい、あまり緊張はしなかった。
食事はフランス料理のフルコース。
ワインをはじめ、飲みものはフリードリンクで
夫妻が召し上がった酒は、メルシャンのロゼワイン。
白から赤への移行が面倒だったのかもしれないし、
ワインには無頓着だったのかもしれない。
注文は長嶋さんからいただいたが、
ロゼを選ばれたのは、おそらく奥様の亜希子さんだろう。

冷たい前菜の盛合わせでスタートして
そのあとの料理が思い出せない。
タースカップで、コンソメを出したのか、
平目のフロランタンか、伊勢海老のテルミドールか、
その記憶がポッカリ失われている。
ただ、亜希子夫人のカトラリーの使い方が
とてもエレガントだったことはよく覚えている。

メインディッシュは和牛フィレ肉のステーキ。
その前の料理の皿を引くときに
「長嶋さま、赤ワインをお持ちいたしましょうか?」
お伺いを立てると
「いえ、このままでいいデッス!」
おなじみのカン高い声で応じられた。
そして焼きあがったステーキをあっという間にペロリ。

牛肉にはクレソンが添えられる。
監督の皿にはそのまま残されたが、
夫人はさりげなく指でつままれ、口元に運ぶ。
これには感心しましたねェ。
当時こういうマネのできる女性は
ほとんど見かけたことがなかったもの。
食事のときのマナーもしぐさも完璧。
素敵な奥様との印象を深くしたものだ。

ここでハナシは飛ぶが、
おもに女性と会話を交わしているときに
「どういうタイプの女の人が好きなの?」
こう訊ねられることが、ままある。そんなときは
「テーブルマナーをさりげなく身に付けている人」
そう応えることにしている。
原点はもちろん、亜希子夫人であることは
言うまでもない。

 
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2006年10月30日(月)

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