「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第87回
「黒革の手帖」のあとの ハシゴ酒 (その1)

最近、芝居を観る機会に恵まれ、殊に明治座づいている。
先月は「女たちの忠臣蔵」、今月も「黒革の手帖」、
来月には「最愛の人」を2度も観劇する予定だ。

「女たちの・・」では涼風真世の迫真の演技が白眉で
盲目の役をやらせたら天下一品、会場の涙を誘った。
新境地を開拓しつつある松村雄基の鼓にも
猛練習のあとが垣間見えて好印象。

TVドラマでブレイクした「黒革の・・」は
週刊誌の連載を一部読んだ記憶があるものの
ストーリーは完全に忘れてしまっている。
ドラマは見ていないから、まったくのブッツケ本番。
それはそれで楽しみではあった。

夜の銀座になじみのある人に、前半はやや冗長気味か。
最後の一幕で一気に盛り上がったのがせめてもの救い。
主演の米倉涼子も熱く演じていたことは確かだ。
左とん平がトボケた味を出し、香辛料の役割を果たす。

それにしてもこの作品は登場人物が悪いやつらばかり。
波乃久里子演ずるおでん屋の女将を中心に
その店に集まる客たちだけがお人好しの役柄。
彼女及び、新派のファンとしてはおでん屋シーンを
もうちょいとふくらませてほしかった。

ささやかな満足感を残し、3時過ぎに芝居はハネた。
あとは芝居に匹敵するほど楽しみな飲み会。
祝日の宵の口とあって、浜町・人形町あたりでは
これといった店が思い浮かばない。
気のあった仲間が男女4人集まったのだ、
1軒や2軒でお開きなどという展開は
誰一人考えちゃ、いやしない。

芝居の原作は松本清張、そこからの連想で
出世作「点と線」にも実名で登場した
有楽町の「レバンテ」へ出向き、
牡蠣料理という手がある。
しかし、頃は10月の初旬、
生牡蠣にはまだ早いのではなかったかな。
行って無ければ無駄足と、思いとどまった。

ここはやはり浅草に頼るしかなかろう。
浅草は日曜・祝日関係なし。
むしろ日・祝のほうが活気があって
中休みすら取らない店も数多い。

タクシーに乗り込み、江戸通りから国際通りに抜ける。
車内で思いをめぐらせ、向かった先は
ふぐと活魚の「三浦屋」。
う〜ん、生牡蠣同様、ふぐにもまだ早いか。
何の脈絡もなく、ふいに芭蕉の句が脳裏をよぎった。
 河豚汁や 鯛もあるのに 無分別
そうだ鯛もあるし、かつおもあろう。
毛蟹だって夢ではないぞ。

       =つづく=

 
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2006年10月31日(火)

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