「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第88回
「黒革の手帖」のあとの ハシゴ酒 (その2)

浅草はひさご通りの裏の「三浦屋」に到着。
お持ち帰りコーナーには、様々なサカナたちが
小皿盛りの刺身となって並んでいる。
近所に住む人は幸せだ。
奥に進むと、いつものように主人が笑顔で迎えてくれる。

アサヒの中ジョッキとともに、突き出しの子持ち昆布。
赤貝とそのヒモの刺身、縞あじの河豚造りを経て
たる酒の冷やに移行する。
お次のかつおのたたきには
忘れずに生ニンニクのスライスを所望した。
かつおには何てったってニンニク。
生姜もあったほうがうれしいが、
どちらか一つと言われれば、断然ニンニクだ。
それもすりおろしたものより、スライスが好ましい。

ふぐちりには目もくれず、
メインは1パイ4830円也の毛蟹。
ミソがみっしり詰まっていてありがたい。
「蟹を食うときゃ、みな無口」
誰が言ったか知らないが、全員よく飲み、よくしゃべる。

このあと何度か河岸を変えることになるので
何か軽いものでもと、頼んでしまった新島産クサヤ。
数ヶ月ほど前に神田は明神下、
「左々舎」の小上がりにくつろぎ、
自分であぶったクサヤの一夜干しが忘れられず、
みんなの反対を押し切ったのが大失敗。
あたり構わぬ激臭に見舞われてしまい、
結果は予想外の大ヒンシュクであった。
1人約4千円のお勘定には
一同気を取り直してニッコリと、げんきんなもの。

2軒目は「三浦屋」から歩いて
30秒の距離にある「正直ビヤホール」。
口八丁手八丁の名物ママが独りで仕切る店は
ビヤホールとは名ばかりの小店。
8席ほどのカウンターだけだから、すぐに満席となる。
看板商品は1杯500円の生ビール。
これが浅草には珍しいサッポロで、
丁寧に注がれた泡の状態が特筆に価する。
ビール以外は大衆的な甲類の焼酎があるのみ。
つまみの類いもほとんどなく、
6Pチーズを無造作にポンと出してくれる程度。
たまに、昔懐かしいソースせんべいにありつけることも。

真に生ビールを楽しむ店で、浅草広しといえども
こんなスポットはここ1軒だけだろう。
競馬の開催される土日には、常連が反省会に集結、
カウンターを占領して、席の確保もままならない。
競馬に勝とうが負けようが、
ビールを飲ませたら底なしのママさんに
必ず1杯オゴッてあげるのが
この店のしきたりで、もはや常識。

      =つづく=

 
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2006年11月1日(水)

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