「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第95回
柴又は 鯉と鰻と 草だんご (その2)

帝釈天の参道は「川千家」の鯉こくのつづき。
鯉特有のイヤな臭みなどみじんもないお椀には
大きな筒切りが1切れそのまま入っている。
身肉に加えて、肝も白子も入っている。
骨と鱗(うろこ)に気をつけながら食べすすむと
ビールにも燗酒にも実によく合う。
しまいには少々残ったところに
白飯をお願いして、一緒に味わった。
鰻のあらいと鯉こくのおかげで
柳川とうな重がかすんでしまったくらい。

その後、再訪していろいろ試してみたが、
鰻白焼きはそれなり、天ぷらは予想を上回った。
難を言えば、鯉のあらいが鯉こくほどではないことと
鰻肝焼きがいつも売り切れていること。
肝焼きなど、1日にほんの数本しか
用意されていないのではなかろうか。

江戸川由来の川魚料理に代表される
柴又名物を語り始めたら、
草だんごに触れぬわけにはいかない。
寅さんが舞い戻る「とらや」も団子屋さんだ。
甘いものは好まぬし、間食もしないので
だんごや大福の類いにはトンと縁がない。
柴又の草だんごも何度かみやげにいただいた
記憶はあるのだが、味までは覚えちゃいない。

11月最初の連休、近くの松戸に墓参りのおり、
久々に柴又に立ち寄った。
昼食は金町の「とんかつ喝」と決めていたので
寅さんゆかりの地で食事をするつもりはない。
それならばと、普段は食指の動かぬ草だんご。

参道を往復して値踏みのあげく、
白羽の矢を立てたのが「吉野家」。
家族経営の小体な店は今まで存在すら気付かなかった。
あとで調べてみると、休む日のほうが多いという。
道理で、記憶にないわけだ。
間口の狭い店先に、原料のよもぎが並んでいるし、
目の前で濃い緑の生地を練り上げてもいる。
この緑の濃さが他店を圧倒するほどのもの。
迷わず買い求め、人目のないところでさっそくパクリ。
確かによもぎの香りは濃厚なのだが、
大粒のだんごはモコモコとした口当たり。
これではトンカツが入らぬと、ほどほどにしておく。

たまたまその夜は
歌舞伎やお芝居に縁の深い方のお宅にお呼ばれ。
格好の手みやげになるので
今度は有名な「高木屋老舗」の折詰めを。
こちらのだんごはやや小ぶりの薄緑。
ついでに自宅用、といっても誰もいないが、
一番小さいのを買っておく。
翌日忘れていたのを思い出し、そのまま食べて驚いた。
だんごはちっとも固くならずに柔らかいまま。
さすがに人気の有名店、その名に恥じることなく
真っ当なものを作り続けているんだなぁ。
ダテに老舗を名乗っちゃいないね「高木屋」さん!

 
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2006年11月10日(金)

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