「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第102回
今年最初の上海蟹 (その1)

蟹には目がない。殊に毛蟹は大好き。
味噌はもとより、脚肉だけでなく、
甲羅の中にミッシリ詰まった身肉もまた何よりだ。
タラバは食べ出があるが、やや大味。
松葉・間人・越前に代表されるズワイも美味ながら
あまりに高級で、もはや高嶺の花となってしまった。
そういえば、一昔前は安価だったワタリ蟹でさえ、
ずいぶん高価になったものなぁ。

秋の深まりとともにシーズンを迎えた上海蟹は
巷のグルメがもてはやすほどには執着していない。
味噌の旨さは知り尽くしていても
なにぶん小型の蟹ゆえ、脚の肉を外すのが厄介至極。
ひと冬に1度食べれば、もうそれで満足。

中杉通りを阿佐ヶ谷から鷺宮方面に北上したところに
界隈屈指の中国料理店があると聞いて、一夜出かけた。
小雨そぼ降る中、到着した「皇蘭」の入り口には
上海蟹入荷のお知らせが。

アサヒ樽生の中ジョッキを傾けつつ
念入りにメニューに目を通す。
くらげの評判が高いので
滅多に頼まぬ三種冷菜盛り合わせを。
くらげのほかに焼き豚と棒々鶏の内容だ。
ピータンとエクストラの香菜もお願いして
すかさずの老酒は、紹興大越貴酒の15年物。
ふくよかな甘みを持つ銘酒であった。
氷砂糖など出さぬ代わりに
砂糖のコロモをまとった
カシューナッツを添えてくれ、
合間あいまにつまんでみると、これがいい合いの手。

継ぎのつもりの焼き餃子と小籠包子が
思いのほかの大当たり。
平ペったい餃子は皮が薄く、肉汁いっぱい。
小籠包子はその上をいく逸品で
もっちりとした食感に
中の肉餡とスープが絶妙に絡み合い、
本場・上海でもやすやすとは出会えぬほどのもの。
早くもこの店の実力を知ることとなる。

花切りイカと金針菜の炒めもの相性の妙。
細やかに庖丁を入れたイカの身に
緑鮮やかな金針菜がよくなじむ。
ちなみに金針菜というのは百合の花のつぼみのこと。

あとは定番の小海老のチリソースと
酢豚を待つばかりだが、やはり上海蟹が気にかかる。
メスにはまだ早いかな、と思いながらも
オス・メス1匹ずつ注文する。
蟹が蒸しあがるまで、ほかの料理を
留め置いてくれるのは、さすがの気配り。
調理場には旦那さん、お運びは奥さんかしら、
中年夫婦二人きりの切り盛りのようだ。

        =つづく=

 
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2006年11月21日(火)

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