「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第109回
行かなきゃいけない 銀座の名店 (その3)

銀座の食べ歩きも
鮨・天ぷら・うなぎ・そば・おでんと廻った。
続いては
和食・洋食・食堂・酒亭を駆け足で。

和食は「いまむら」。
故池波正太郎翁がこよなく愛した店である。
店主は翁が行きつけだった末広町の「花ぶさ」出身。
ちなみに店主夫妻の媒酌の労を取ったのは池波夫妻。
京都ではなく江戸の和食を実感させる料理は
1万円のコースのみで、アラカルトはなし。
普段は極力コースを避けていても、この店は外せない。
力強い出汁が主張するお椀が出色の出来映え。
白身・青背・貝類とバランスの取れた刺身も一級品だ。

銀座は花街でも色街でもなかったから
懐かしいにっぽんの洋食屋は少ない。
「資生堂パーラー」・「煉瓦亭」・「みかわや」を
御三家として異論のないところだと思うが、
メディアに登場しない店を探すのは至難の業。
あえて挙げれば「榮庵」か。
「お酒の飲めない方はご遠慮ください」という
フレンチ色豊かなカウンター席の洋食店は
基本的におまかせ主体ながら
客のリクエストにも応えてくれ、ボリューム満点。
客自身がセラーで選ぶワインの値付けも良心的だ。

食堂は「タイガー食堂」。
中年夫婦二人きりで営む庶民的な食事処。
さばやさんまの焼き魚定食もいいが、
一番人気は日替わりの「今日のランチ」。
とある日の内容は
ハムカツ・鳥ささみフライ・マカロニサラダ・
カレーシチュー・豚汁・ごはん。
シチューといっても普通のカレーソースで
このカレーと豚汁はいつも組み込まれる定番。
昭和30年代を彷彿とさせるこんな雰囲気の食堂は
銀座広しといえども、ほかに見当たらない。

少なく見積もっても数百軒はある
酒亭・居酒屋からピックアップするとなると
プールの底にコンタクトレンズを探すような話。
熟考の末、白羽の矢を立ててみたのが「中ぜん」。
東銀座は歌舞伎座の脇を入ってすぐ右手にある。
このあたりまで来ると、銀座の喧騒とは無縁だ。
テーブルに落ち着くよりもカウンターがよく、
古き良き銀座の空気が立ち込めている。
別段料理が傑出しているわけではない。
突き出しのひしこ鰯の佃煮など
「築地で買ってきた出来合いです」と
店主は悪びれることがなく、
温厚な人柄が偲ばれる。

フレンチ・イタリアン・中華に関しては
優良店はみな何度となく
テレビや雑誌に取り上げられ、すでに有名店。
これらのジャンルでの無名店の発掘は
ミッション・インポッシブルにつき、悪しからず。

 
←前回記事へ

2006年11月30日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ