「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第110回
ディープな街だぜ!大井町 (その1)

古くは三業地だった大森海岸に
久しぶりに出向いた。
新著の取材に老舗そば屋を再訪したのだ。
数年経っても「老舗の味」に改良のあとは見られず、
低い評価をそのまま据え置くことに。

その帰り途、消息の途絶えたもつ焼きの「鳥七」を
これもまた再訪するために、お隣りの大井町へ。
歩けない距離でもないが、
冷え込む晩のこと、タクシーに乗り込んだ。
風の噂に店を閉じたと聞いたので、駄目で元々の心境。
三つ又交差点近くの「鳥七」は案の定、廃業の様子。
電話には誰も出ないものの
呼び出し音は鳴り続けるものだから、
一縷の望みに賭けての訪問も結局は無駄足だった。
ちなみに東口にある「鳥七」はまったくの別店。
昔は蒲田にあった純粋な焼き鳥屋で
もつ焼き専門店ではない。

まっ、こういうことはままあるもの。
ここでくじけるJ.C.ではござらん。
たまたまその夜のツレはかっての大井町の住人。
土地カンがあるから、飲食店の所在にも明るい。
JR北口の脇に広がるディープな一郭に向かった。
東小路と呼ばれる裏路地は開発から取り残され、
若い女性など一人歩きをためらうエリア。
でもこんな場所がたまらなく好きなのだ。

小路入り口の中華料理屋「一富士」がすでに消えている。
渋谷は道玄坂の「喜楽」によく似た
揚げねぎ入りのラーメンが旨い「永楽」は健在だ。
その奥の大衆的な洋食屋「ブルドッグ」の
灯りもポツンと点っている。
この2軒が暖簾を降ろしてしまったら
時代遅れのスポットは終わりだろうな。

そば屋のあとでラーメンでもなかろうし、
ましてや洋食ではあまりに重たい。
カラダはフードよりもリカーを欲している。
さてどこにしようか、ぶらぶらと界隈を散策。

協議の結果、相棒の発案により、
「大山酒場」なる時代掛かった店名の
大衆酒場に突入することにした。
22時の閉店までは1時間半ほどあるので
そこそこに腰を落ち着けて飲めそうだ。

1階にはカウンターが2つとテーブルが数卓。
漂う空気は昭和30年代を通り越して
もはや終戦直後そのものだ。
もっとも実際にはまだ生まれていないから
その空気を吸ったことはないけれど。
「コイツは悪くないぞ!」
2階への階段を上りながら、早くも胸が弾んでくる。

        =つづく=

 
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2006年12月1日(金)

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