「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第111回
ディープな街だぜ!大井町 (その2)

大森のそば屋を経由しているから
お腹はかなり満たされている。
ただ看板の時間が早く、追い立てられた恰好で
まだまだ飲み足りない。
そんなこんなで暖簾をくぐった大井町の「大山酒場」。

2階に上がってみると、これがまたいい感じ。
1階よりもレトロ感を感じさせる。
いやいやレトロなどと月並みな言葉では
表現しがたい懐かしの光景がそこにあった。
BGMこそ流れていないが、掛けるとすれば
三橋美智也、藤島桓夫、松山千恵子あたりが
この場にシックリくるだろう。古いね、ボクも。

テーブルが8卓ほど並び、
粗末な古ぼけたビニール張りの椅子と
パイプチェアが取りとめもなく
入り混じって配備されている。
席はほぼ埋まって、空いているのは1卓だけ。
その奥に小上がりがあるが、畳の色はアメ色に染まり、
20年は張り替えてないんじゃないかしら。
そのせいでもあるまいが、客は誰も上がっていない。

1卓だけ空いていたテーブルに着くと
そこはトイレの真ん前だった。
こんな感じの店だから、仕方がないや、とあきらめる。
揃いの三角巾で頭を包んだお運びの
オバちゃんたちはみな、動きは鈍いが人はいい。

キリンの中ジョッキと煮込み豆腐をまず注文。
大森のそば屋ではどちらも重たいタイプの
アサヒ熟撰とオレゴン産蕎麦ビールだったから
のど越しスッキリの生ビールに生き返る思いがした。
煮込みの中の牛モツは内側に脂身を蓄え、
コッテリ派には垂涎だろうが、
アッサリ派のわれわれには少々、シツッコい。

ビールのあとのチューハイは
おいおい、ほんとに焼酎を入れてくれたの?
と勘ぐりたくなるほどに薄いもの。
ゴム製品の薄いのはいいけれど
チューハイの薄いのはなぁ。
墨田区あたりの大衆酒場じゃ
客が黙っちゃいないだろうね。
ピーマン肉炒めとソース焼きそばを追加して
そのまま雰囲気に浸り続けた。

面白いのは注文品を書きとめた紙片を
床を貫いたプラスチックの雨どいを通して
階下の調理場に落とすシステム。
出来上がった料理は専用のリフトで上がってくる。
インターフォンによる伝達より間違いが少ないらしい。

この手の店にしては飲んだくれの
オヤジたちも見当たらず、
近隣のサラリーマンがおとなしく飲んでいる。
さすがに閉店真際になると
トイレの出入りが激しくなり、匂いに我慢ならなくなった。
長居は無用と勘定を済ませ、再び夜の街に出る。
いつまた来れるか判らぬが、ひょっとすると
これが見納めかもしれない大井町の東小路であった。

 
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2006年12月4日(月)

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