「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第112回
格安ビストロは なぜ潰れないのか?

一時期、フレンチやイタリアンで
一世を風靡したのが3800円のフルコース。
その後、値上げした店も少なくないが、
そのまま値段を据え置いて、奮闘しているところも多い。

神楽坂から牛込方面に向かって10分ほど歩くと
牛込中央通りにぶつかる。
市谷のお濠端に下ってゆく坂道には
和・漢・洋を問わず、飲食店が点在している。

大久保通りと牛込中央通りの交差点を
お濠と反対方向に上ってほどなく、
格安ビストロの「ブラッスリー・グー」がある。
ビストロとブラッスリーは本来異なるものだが、
この店はどう見てもビストロ。
最近は簡単に予約が取れるものの、以前は大変だった。
人気の秘密は2940円のコース料理の値段とボリューム。
この値段で提供して、なぜ潰れないのだろうか。

今の世の中、インターネットのおかげで
情報はあっという間に知れ渡る。
コスト意識の高いグルメ嬢たちは
こういう店を放っておかないから、集客には事欠かない。

問題はコストのコントロール。
コースを食べてみて、そのからくりが判った。
まず前菜がキッシュやテリーヌなど
温め直すか、切り分けるだけで済むものがほとんど。
余計な手間ひまを極力排している。

主菜もロティや煮込みが多く、手の込んだ料理は少ない。
加えて肉系が主体で、アシの速い魚介類は1品のみ。
その夜はすずきのポワレだけだった。
ブラッスリーの看板を掲げてはいても
定番の舌平目のムニエルや
エイの黒バターソースは影も形もない。

ガルニテュール(付け合せ)も
前菜にはすべて生野菜、主菜にはみな温野菜と
作り置いているから、皿の出は非常にスムースだ。
よって、一晩の二回転を簡単にクリアしている。

サービスは人件費を抑制できる若い女性に託し、
テーブルクロスは使い廻しのきく
紅白のギンガムチェック。
かくして2940円のフルコースが可能となった。

肝心の料理だが、これがちっとも悪くない。
帆立&白身魚のムースとオニオンのキッシュの盛り合わせ、
牛タンのポワレの香草バターソースなど
傑出しているとは言いがたいが、ともによかった。
さすがにデセールでは息切れを感じさせるものの
総合評価を下すと、じゅうぶんに合格点を付けられる。
店内が若いOLであふれ返るのも、むべなるかな。

 
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2006年12月5日(火)

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