「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第113回
浅草で芸者遊び (その1)

晩年の永井荷風ほどではないが、
浅草にはしょっちゅう出掛けている。
それも昼夜を問わずに。
荷風散人はもっぱら昼どきに現れ、
気に入りの料理店で昼食を取り、
そば屋では銚子を1本空けたようだが、
おおむね夕暮れには
自宅のあった本八幡にお帰りになっていた。

当方の場合、昼はもっぱら
そば屋・うなぎ屋・天ぷら屋・とんかつ屋・
洋食屋・ラーメン店と相場が決まり、
宵のうちは鮨屋・和食店・居酒屋・ビアホールで過ごし、
夜が更けるとバーかスナックだ。

観音様の北側、言問通りを渡ったところが観音裏。
観光客が迷い込むこともない
地元の人たちに支えられているエリア。
5656会館の脇をすり抜けてほどなく
行きつけのスナック「N」がある。
通い始めて8年ほどになろうか。
穏やかな性格のママが独り営む店なのだが、
素人っぽさも手伝い、常連にこよなく愛されている。
遠方より来たる客も、けっして少なくない。

先週の一夜、「N」の開店10周年を祝う会が催された。
会場はなんと浅草見番だ。粋な計らいもここに極まれり。
見番といえば、芸者衆の総元締め。
料亭と置屋の仲立ち役と言ったら、通りがいいだろうか。
前を通り過ぎることはたびたびながら
足を踏み入れるのはこれが初めてにして
おそらく最後だろう。

勝手知ったる観音裏だが、
芸者さんを上げての酒宴は過去にも数えるほど。
ウキウキして、着流しでも羽織って行きたいところを
一人でモテちゃうと、みなのヒンシュクを買うので
ここはこらえて、ダークスーツにノーネクタイ。

18時を回った頃に到着。間もなく開宴となった。
総勢三十有余名の半分程度は見知った顔、気楽なものだ。
もともと見番に宴会場などあるハズもなく
つどったのは芸者衆のお稽古場。
最初から舞台があるから都合がいいことはいい。
料理を出すこともあり得ぬことで
その夜のご馳走はすべてお取り寄せ。
観音裏きってのふぐの名店「かねまん」のふぐ刺し。
芸者遊びのできる「割烹あさくさ」の三重弁当。
美酒を酌み交わすのに不足はない。

卓を同じくしたのは、四半世紀来の友人で
「N」を紹介してくれたI上氏。
刎頚(ふんけい)の飲み仲間・O会長。
同じく社会労務士のS嬢。
花の吉原は「寿司幸」の親方の顔も見える。
さあて、舞台も役者も揃いに揃ったわい。

        =つづく=

 
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2006年12月6日(水)

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