「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第116回
小唄の師匠と 囲む寄せ鍋

半年ほど前から小唄を習っている。
お師匠は春日とよ栄芝さん。
小唄の「小」の字も知らぬ身で
日本を代表する小唄界の大御所の
手ほどきを受けるとは
身のほど知らずもいいところだが、
それはそれとして、結構楽しませてもらっている。

「梅は咲いたか」に始まって
現在さらっているのは「置炬燵」。
途中、「芸」の壁にブチ当たったのは「お互いに」。
「半年そこそこで何が芸だ、馬鹿め!」
読者のささやきが聞こえぬでもないが、
下手は下手なりに一生懸命なのですよ。

一夜、酒造会社の常務をしている学友のK石君、
最近知り合った飲み仲間で総合商社の部長のT島君と
お稽古場で一堂に会した。
ボクが紹介した妹弟子で歯科医のTちゃんも
たまたまその日がお稽古日。

お師匠自ら淹れてくれた煎茶をいただきながら
卓袱台に控えて順番を待つのだが、
亀屋良永の山づとなる栗まんじゅうに目が留まった。
普段、甘いものには手を出さないのに
天保3年創業、本能寺の門前に
構える老舗と知っては看過できない。
パクッとやると、ニッキの香りのおだやかな甘み。
ふと「京都に行きたいな」と思わせるものがある。

ほかのお弟子さんはどなたも現れない日のことで
われわれのあとはお師匠もフリーの身。
これ幸いと5人うち揃い、浅草の街に繰り出した。
目指すはどぜうの「飯田屋」の脇道を入った突き当たり。
焼肉「本とさや」のはす向かいの「鍋茶屋」。

浅草屈指のうなぎ屋さんはこの季節になると
鍋を始めてくれている。
最初にうなぎ肝焼きをお願いすると、これが売り切れ。
訊けば、この日は鷲神社の三の酉。
終日客足が絶えずに、焼き鳥も残り少ないとのこと。
あわてて焼き鳥を見繕ってもらい、
鳥わさと牡蠣のみなと焼き(醤油つけ焼き)、
そして、うなぎ白焼きを追加する。

今夜のお目当ては鍋。
寄せ鍋と牡蠣鍋があるうち、寄せ鍋でゆく。
金目鯛に小海老に牡蠣、白滝と焼き豆腐、
野菜類は銀杏・絹さや・春菊・にんじん・ねぎ・白菜。
あっさりと上品なお出汁も出色だ。

この夜のJ.C.は鍋奉行にして、アク代官も兼任。
ごはんを投入後、玉子でとじた雑炊を一同に取り分ける。
みなの食欲衰えず、うなちらしを分け合って締めとした。
酢めしの上に蒲焼きを並べ、
錦糸玉子を散らしたうなちらしなる一品は
東京広しといえども「鍋茶屋」だけのオリジナルなのだ。

 
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2006年12月11日(月)

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