「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第118回
行ってはみたが 秩父夜祭 (その2)

昭和2年創業の「パリー食堂」。
前身はカフェーだったこの食事処にシビレた。
1階のホールは三和土(たたき)の床。
その真ん中で石油ストーブが燃えている。
使い込まれたテーブルは脚の長さまちまちでガタピシ。
天井には6本の蛍光灯。テレビの上にはまねき猫。
表通りに面する窓際に、植木鉢が所狭し。
料理が出てくる厨房のガラスの小窓は懐古調。
古き良き時代を偲ぶよすがが、ここかしこ。

1階奥に小上がりが1つ、
2階にはわりと広めの座敷が2つある。
往時、この店の畳敷きの部屋では
男女のひそやかな睦みごとも
日常茶飯事だったのではなかろうか。
妓楼の妖しい匂いがプンプンとする。

ビールはサッポロ黒ラベルの大瓶。
ひっきりなしに客が注文するせいか、冷えがイマイチ。
この日の気温なら、屋外に置いたほうがよさそうだ。
もつ煮の中身は豚の白もつとこんにゃく。
柔らかく煮えていて、臭みもない。
手造りの肉シュウマイは気に入った。
一昔前にはどの町の肉屋さんでも必ず売っていた
グリーンピースが1粒チョコンと乗ってるヤツ。
つなぎも多めで、中華料理店にありがちな
肉たっぷりの、文字通り肉々しいシュウマイより
こんなタイプが懐かしくて好き。

関東地方も内陸部に入り込むと、夜はさすがに冷え込む。
訪れる客が頼むのは圧倒的に燗酒とおでん。
酒を飲まない夫婦連れや
女性の小グループはこぞってラーメンだ。

ソースかつ丼のごはんを少なめにしてもらって
ソースに浸ったヒレかつを酒の肴とする。
そういえば、四半世紀前に寄居駅前の食堂で
食べたかつ丼もソースかつ丼。
福井県ではよく食べられるのだが、
秩父市・長瀞町・寄居町あたりでも
通常のかつ丼より人気があるようだ。

花火がポンポンと上がっている。
サッポロの大瓶1本に、秩父錦の一合瓶が3本。
いくらお祭りだからといって、年に1度の夜祭を
ほったらかしにしてまで、飲むこたぁないのに。
外へ出たものの、向かいの「バー・スノッブ」が気になる。
見過ごせずに立ち寄り、ハードシェイクのXYZを1杯に
のどが渇いたのでスロージンフィズを1杯。

秩父神社から出発する最後の山車を見届けて
秩父の街をあとにする。
そこからどこへ行ったと思います?
遠路はるばる群馬の水上温泉に到着したのは午前零時。
秩父界隈の宿がたやすく確保できるとは思わぬが、
これじゃ、東京に帰るのと変わらない。
思えば遠くに来たもんだ。
第一、 真夜中に温泉に着いてもなぁ。
雪までチラチラ舞いだした。

 
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2006年12月13日(水)

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