「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第135回
日本人は なぜビールに無頓着なのか?

一億総グルメ時代の到来といわれて久しい。
食べものやレストランに関する情報は
巷にあふれ返っている。
雑誌にガイドブックにテレビにインターネット、
その気になりさえすれば
知りたいことは何でも判る。

日本人は、中国のラーメンと餃子、
インドのカレー(英国経由だったにせよ)、
イタリアのスパゲッティ(米国経由だったにせよ)、
ありとあらゆるものを自分たちのものにしてきた。

季節感にも敏感で
春の山菜、夏の鮎、秋の松茸、冬の牡蠣。
地球儀をクルリと回してみても
こんな民族はそうそういるものではないぞ。

その日本人がである。
ことビールに関しては、はなはだ無頓着。
これが不思議でならない。
居酒屋でもレストランでもほとんどの客が
ただ「ビール!」と注文するばかりで
銘柄を指定するのはほんの一握りではないか。
キリンラガー、サッポロ黒ラベル、
アサヒスーパードライ、サントリーモルツ、
それぞれにみな個性が異なるのにね。
エビスなどはすでにラガービールの域を超えている。

味覚オンチと日本人がさげすむイギリス人でさえ、
パブに出掛ければ、ラガーだ、ビターだ、
スタウトだと、好みに合わせて注文している。
同じく、ハンバーガーとステーキばかり
食べていると思われる(実際はそうではないが)
アメリカ人だって、ミラー、ミケロブ、バドワイザーと
しっかり銘柄指定をしている。
「Can I have a glass of beer?please!」なんて
トンチンカンな注文をする人は、まずいない。

どうしてこんなことになったのか?
推察するに、日本ではまず9割以上が
ラガービールで、各メーカーの製品も
それほど明確には風味の違いを主張して
こなかったからだろう。

客だけでなく、店側も似たりよったり。
「ビールは何がありますか?」
「生と瓶がありますが、、、」
そういうことを訊いているんじゃないんだなぁ。
たまさか
「生はアサヒ樽生、瓶はキリンクラシックラガーと
 エビスをご用意させていただいております」
こんなウェイトレスに出会ってしまうと
それだけでその娘が可愛く思えてしまう。

日本酒は越後の大吟醸、焼酎は薩摩の芋、
ワインはボルドーのメルロー、
人それぞれの好みや薀蓄もけっこうだが、
「取り合えずビール!」で片付けるのではなく、
琥珀色の液体にはもうちょいと
こだわりを持っていただきたい。

 
←前回記事へ

2007年1月5日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ