「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第138回
赤坂の夜を 珍店「黒猫夜」で (その2)

なんとも不気味な名前の中華料理店「黒猫夜」。
「くろねこよる」と発音するのだが、
連想されるのは、エドガー・A・ポーの短編小説。

ピータンとパクチーに続いて
百家風鴨舌の炒め、ウルムチの羊串焼き、
豚大腸の一本揚げの3皿を注文。
楽しみにしていた田鰻と田鶏(食用ガエル)は
品書きから外されていた。
活魚の清蒸もアイナメならともかく、
当夜はホッケとのこと、これにも食指が動かない。

鴨舌は東京では非常に珍しい一品。
ニューヨーク在住中にチャイナタウンで見つけ、
さっそく買い求めて、ニンニクと生姜で炒めてみたが、
小骨が多いものの、なかなかの珍味。
気に入ったのを覚えている。

羊串焼きはクミンが効いて
いかにもシルクロードという感じ。
添えられた調味料はあまりに化学的なため、
そのまま食べたほうが美味しい。
ただし冷めるとガクンと味が落ちるので熱いうちに。

大腸も外がカリカリ、中はシットリ。
モツの醍醐味をじゅうぶんに味わえる。
テイスティングの末に選んだ紹興黄酒の
黄中皇(ファンジョンファン)10年物との
相性もすこぶるよろしい。

台湾産の水蓮菜の塩味炒めも鴨舌同様に珍しい。
水中で育つ高級野菜らしいが、
睡蓮でなく、水蓮の名を持つのだから
蓮根などとは無関係の野菜のようだ。
見た目はシブレットそっくりで、食感はシャキシャキ。
初めて食べたが、空芯菜やターツァイ(如月菜)に
飽きたときには目先が変わって重宝しよう。
残念なのはこの皿もまた、化調にまみれていたことだ。

この店は濃い目の味付けと化調の使いすぎがネック。
この2つの問題をクリアすれば
食材の個性と料理法の独創性が相乗効果をもたらし、
高い評価を得られるようになるハズだ。

蒸し鶏をトッピングした小ぶりの汁そば・光麺と
中太もちもち麺使用の五目焼きそばで締める。
この2品に限っては他店との違いが顕著ではない。
言ってみれば、どこででも食べられるもの。
台湾風の焼きビーフンにすればよかったかな。

なんやかや言っても
今どき貴重な珍店であることは確か。
懸念されるのは芳しくない客足だ。
「東京いい店うまい店」に
取り上げられるくらいだから閑だったのは
たまたまその夜だけだったのかもしれない。
ゆめゆめ潰れてほしくない1軒ではある。

 
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2007年1月10日(水)

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