「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第147回
うれしい誤算の「石丸館」 (その1)

中目黒駅の改札を右に出てほどなく、
再び右に曲がれば、そこから始まる目黒商店街。
目黒駅からはずいぶん離れていても
中目黒ではなく、目黒商店街を名乗る。
この通りの先には早稲田の「三朝庵」と並んで
元祖カレー南蛮を謳う「朝松庵」がある。
元祖が2軒とは不思議な思いがするが、
早稲田はうどんで、目黒はそばということらしい。

商店街のなかほどのビル2階にある「石丸館」。
「東京いい店うまい店」の料理評価は四つ星。
実はこの店、ネットで検索すると賛否両論。
おしなべてシェフの手になる
料理の評判はさることながら
マダムの接客に問題ありとの指摘があった。
料理5点、サービス1点で、
総合的に3点などと、指摘する方もおられた。
こいつは次著のターゲットにうってつけと
失望を覚悟の上で、足を運んだ次第なのだ。

階段を上がって店先に立つと
入り口近くに腰を下ろしたマダムが
何やら書類に目を通している姿が見える。
われわれに気付いた彼女が
店内に誘導してくれたが、レストランではなく、
どこかのオフィスに迷い込んだかのような
錯覚に捉われてしまった。

電話予約の際に、あらかじめお願いしてあった
金6300円也のコースがスタートする。
コースはほかに8900円と10500円の計3種類。
多少のアラカルトの用意もあるようで
料理ボードにはフォワグラと
ブルターニュ産オマール海老が記されていた。

飲みものはエビスの小瓶とニコラ・ポテルの
ニュイ・サン・ジョルジュ2000年。
12000円の値付けは良心的なものだ。
信頼できる造り手につき、
シャサーニュ・モンラッシェや
サヴィニー・レ・ボーヌのうちからこれを選んだ。
デカンタージュは遠慮して
ボトルから直接サーブしていただく。
いい香りになめらかな舌ざわり、のど越しもよろしい。

最初にサラミの小皿。ほどなく温められたパン。
パンを2つに割り、サラミをはさんで
小さなサンドイッチを自分で作る。実はこれが大好き。
子どもの頃に観た映画「太陽がいっぱい」で
アラン・ドロンがサラミ&パンをかじっているのを
真似して以来、やみつきになった。
パンの熱にサラミの脂肪分がほどよく溶けて
ローマのバールのパニーニも顔負けの逸品。

アミューズはほぐした蟹肉と
煮崩した野菜類の温製カクテル。
添えられたスプーンですくい、口元に運べば、
穏やかな風味がフレンチチックで
その口元がほころぶ。
化粧っ気のないマダムの
飾り気のないサービスも好印象。
こいつは何やら様子が違うじゃないか。
これからが楽しみ、楽しみ。

       =つづく=

 
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2007年1月23日(火)

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