「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第151回
尾張名古屋の鰻騒動 (その1)

ここ数年、良好な景気指数を
はじき出し続ける尾張名古屋へ。
別に景気動向を探りに行ったのではない。
山本一力作の芝居「あかね空」を観に訪れた。
お目当ては主演の十朱幸代や赤井英和ではない。
去年のクリスマスのヒルトンホテルの
ディナーショーに続いて
高校の後輩の松村雄基の応援に出向いたのだ。
もっともそれにかこつけて、昼2回に夜1回、
美味しいものを食べようという腹積もり。
3軒の食事処はボクが選ぶことにして
1泊2日の旅に出た。

土曜の朝の東京駅のプラットフォームに
終結したのは男女合わせて5人。
正午過ぎには名古屋に到着した。
ホテルにラゲイジを置いて
ランチスポットの「いば昇」に直行する。
名古屋と言えば、うなぎの櫃まぶし。
その櫃まぶしの発祥地が「いば昇」なのだ。

このときすでに鰻騒動が
勃発しつつあったことを誰もまだ知るよしがない。
ことの発端は高校の同級生のK石。
自他共に認める希代の方向音痴である。
この男が珍しくもナビゲーターを買って出たのだ。
名古屋駅から地下鉄に乗って栄駅下車。
節目節目には写真入りの案内図を手に
われわれを先導してゆく。
ところが微妙に方向が違うのだ。

10分足らず歩いて到着したのは
裏路地に暖簾を掲げる「いば昇本店」。
8年ほど前に今回目当ての「いば昇」の前を
通りがかったことがあるのだが、
様子の異なりに首をひねりつつも
本店を名乗るのだから間違いはあるまいと
不安を打ち消しながら入店する。

店内はヤケに古びていて
そのぶん歴史を感じさせないこともない。
全体的にさびれ感も漂っている。
ほの暗い2階の座敷に通された。
まずはサッポロ黒ラベルを注文し、
櫃まぶしのほかにつまみとして、う巻きと長焼きを。

ほどなく運ばれたう巻きは
甘く濃い味付けながら、けして悪くはない。
長焼きはそれに輪をかけた濃厚な味。
なんだか鰻茶漬けにでもしたほうが
よさそうなくらいだ。
接客の女性に訊ねてみたら
長焼きは櫃まぶしのうなぎと
まったく同じものだと言う。
余計なものを頼んじまったとホゾを咬みつつ、
「そんなハズはないんだがなぁ」
不安がだんだん疑念に変わってゆく。

         =つづく=

 
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2007年1月29日(月)

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