「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第156回
警察のお世話に なっちまいました (その2)

カード探しをあきらめ、取り合えず生ビールを飲み干す。
ツレの2人は能天気にクリームあんみつをペロリ。
実は去年の暮れにも三井住友のキャッシュカードを
神保町のバー「GROUND LINE」で落とした。
そのときはまったく気づかなかったのだが、
親切なマスターが銀行に届けてくれ、事無きを得た。
いずれにしろ、立て続けに2度ドジを踏んだわけだ。

そんなことなら財布を持てばと、思われるだろう。
ところがこれはニューヨーク時代のホールドアップ対策。
クレジットカードや100ドル札をやられてはかなわぬと
常に20ドル札数枚は右のポケットにしまっておき、
いざとなったらそれだけを強盗に
お持ち帰り願おうという寸法なのだ。

金曜の夜のことで、週明けにでもりそな銀行に
報告をと思ったままケロリと忘れてしまい、
連絡を入れたのは1週間後の土曜日。
サービスセンターの女性曰く、
どうやら室町支店に届いているらしい。
「上野グリーンサロン」のどなたか、ありがとう。

さっそく翌週、銀行に出向いてみると
キャッシュカードは上野警察署に拾得物として
届けられているという。
どうやら警察に顔を出さなければならなくなった。
ベツにやましいこととてないが、
かと言ってあまり気のすすむものでもない。
「逃亡者」のリチャード・キンブルには
まずムリな相談だろうね。

上野警察の入り口は冬の冷気と夏の暑気を
遮断するために二重ドア仕立て。
常日頃からわれわれの生活を守ってくれているのだ、
気持ちよく仕事をしていただくためにも
このくらいの設備投資は当然でしょうよ。

受付の若い女性に促され、3階の遺失物係へ。
婦人警官というのではなさそうだが、
ここでも若い女性が応対に出てくれた。
あらかじめ銀行で聞いておいた受理番号を告げると
ほんの数十秒で失くしたキャッシュカードが
目の前に現れた。実にサービス迅速。
おまけに言葉遣いの優しいお嬢さん。
いっぺんで上野警察が好きになった。
必要書類を埋めると「ご苦労様でした」のひとこと。
これがまた泣かせてくれるじゃないの。
機会があったら、また来ようっと。

署を出るとき、くだんの二重ドアで
そば屋の出前持ちとすれ違った。
貫禄からして使用人ではなく、店主だろう。
出入りの様子や身のこなしがヤケに手馴れている。
肩に担いだ角盆には、もりそば・ざるそば各数枚に
蓋付きのドンブリが2つ。これはカツ丼に相違あるまい。
警察の取調べにカツ丼は付き物だが、
本当に警察はそば屋の出前がサマになる場所だ。

ふいにカツ丼が食べたくなり、歩いて浅草橋へ。
商店街の「多奈可家」の小ぶりなカツ丼は530円。
割り下がちょい甘めで、シンプルな旨さに満ちている。
少々遠いけれど、上野警察のお世話になったときには
このそば屋のカツ丼を取って貰おう。

 
←前回記事へ

2007年2月5日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ