「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第172回
人形町で 連日の天ぷら (その1)

自分の食日記をパラパラめくっていて
しばらく天ぷらを食べていないことに気付いた。
夜に独りで鮨屋に入ることはしょっちゅうあるが、
天ぷら屋には滅多に入らない。
「独り天ぷら」は昼どきに限る。

柳橋から浜町を経由して人形町まで歩いた。
目指すは久松警察署前の裏路地にある「天ぷら みやび」。
この路地にはお好み焼きで有名な「松浪」も軒を連ねる。
カウンター席が狭く、隣りの客と肘が触れ合うほど。
これがストレスとなるのが玉にキズだ。

前回も数ヶ月前に独りで昼に訪れた。
昼のメニューは天ぷらコースとかき揚げ丼の
2種類のみで各1260円。
そのときは天ぷらだったので
今回はかき揚げ丼の腹積もり。
ところが席に着いてやはり心変わりしてしまう。
実は食べ進むうちに次第にあきてくる
かき揚げ丼があまり得意ではない。
しかも、この店の天ぷらコースは
天ぷらと一緒にごはんを茶碗に軽く1膳のあと、
小柱のミニかき揚げ丼で締めくくるのだ。
何もデカいのをドンと食べることはない。

初めに海老が2本。続いて半割りの帆立。
あとは、さつま芋・穴子・茄子・こんにゃく。
それに白菜の新香とメカブだろうか、
海藻の赤だしと軽くよそったごはん。
最後にくだんのミニかき揚げ丼だ。

前回と寸分の狂いもなくまったく一緒。
天ぷらでは海老がよく、ほかはそれなり。
海老のアタマは出ないから、
それほど良質ではなさそうだが、上手に揚げてある。

隣りには常連さんらしい年配のご婦人が2人。
揚げ手の店主や女性スタッフたちと
盛んに言葉を交わして楽しそう。
しゃべっているのは関西弁。
どうやら今ハリウッドで売り出し中の
日本人女優・菊池凛子の知り合いらしい。

風は冷たいけれど、陽射しが背中に暖かい。
浜町河岸に抜ける途中、
日本橋中学の裏手で、そよぐ香りにピンときた。
自分にとって春の訪れを真っ先に
告げてくれるのは沈丁花の香り。
実はこの世で一番好きな匂いがこれなのだ。
この匂いの香水を身に付けた女性がいたら、
一発で悩殺されること間違いなし。
毎年、初嗅ぎ日をダイアリーに記しているが、
今年は2月16日であった。
例年なら2月下旬か3月初旬にずれ込むのに
今年の暖冬は半端ではない。

道すがら、この界隈でメジロの姿を何度も見かけた。
子どもの頃、やっとなついてさえずり始めたメジロに
逃げられてしまい、母親にこっぴどく叱られた
苦い思い出のあるメジロだが、この小鳥が大好き。
記念すべき日を心に刻むため、ここで一句。
 目にはメジロ 鼻沈丁花 初嗅ぎ日

         =つづく=

 
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2007年2月27日(火)

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