「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第176回
上海帰りのピッグ(豚) (その2)

「やまじょう」の料理はなおも盛りだくさん。
鰤竜田揚げと蓮根素揚げの味噌ペースト。
当夜のメインディッシュに値するボリューム感。
異なる食感を自家製の練り味噌でつないで楽しむ。
鰻の蒲焼き入り玉子焼きは鰻屋でいう、う巻き。
鰻屋にありがちなふわふわ玉子ではなく、
ビシッと焼かれて固く締まっている。

そろそろワインの酔いが回ってくるが、
まだまだホロ酔い程度。
お隣りの大富豪も酔った様子がない。
反対隣りはくだんの別れたカミさん。
元ダンナよりずっと凄腕の彼女は
IT関連の人材派遣会社で社長を務める企業家。
性別が逆だったら夫婦生活も
丸く収まっていたんじゃないかと問いかけると、
その通りだと応える。よく判っていやがら。

ここで本日の主役・上海帰りのピッグが登場。
春節に上海を訪れた女将の手土産なのだが
これには心底ビックリした。
なんと大きな豚の顔が丸々1個、
ペッチャンコになって真空パックされている。
こんなの見たのは生まれて初めて。
顔だけ大型トレーラーに引かれちゃったみたいで
のし烏賊ならぬ、のし豚の出来上がりだ。

耳や鼻や口は言うに及ばず、
黒い瞳の目玉もちゃんと2つ付いて
恨めしそうに正面をにらんでいるものだから、
視線を合わせてしまうと、
不気味なようで、愛嬌にもあふれ、
醜悪なようでいて、愛くるしくもある。
どうも一言で言い表すことのできない
複雑な思いが胸に去来する。

こと食べものに関して
中国人ってのは奇想天外なアイデアを
次々と発揮する民族なのだなぁと
つくづく思い知らされる。

今年は中国では縁起のいい豚年。
それも60年に1回めぐってくる
特に目出度い黄金の豚年なのだそうだ。
子どもを産むにもベストの年で
日本の丙午と正反対の様相を呈している。
彼の地では金色の豚グッズが
飛ぶように売れまくっているらしい。

日本でも岩手県あたりでは白金豚なる銘柄豚を産する。
ゴールドどころかプラチナポークだから
とんかつなんぞにして食べてみたら
さぞやご利益がありそうだけれど
やはり金色でなければ効果がないのかしら。

さてそのピッグフェイス、
女将は持ち帰ってはきたものの
顔に庖丁を入れるにしのびないと尻込み。
結局、お鉢が回ってきて庖丁人に任命される。
耳やあごは固い。肉付きのいい頬っぺたが旨そう。
薄くスライスして豚の頬っぺを自分の頬っぺに頬張れば、
ジワリあふれ出る滋味がハモン・イベリコにそっくり。
スペインの豚も中国の豚もそれほど変わるものでもない。

 
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2007年3月5日(月)

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