「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第177回
真夜中のオムライス

近頃、銀座に出ることが減ったために
夜更けまで深酒するのはほぼ決まって浅草。
夜は早めに店仕舞いするところが多い浅草だが、
観光客とは無縁の観音裏界隈には
深い時間まで開いている店も少なくない。

浅草に頻繁に出没するのは
この街に知り合いが多いことも一因ながら
ほかの友人と会うときも
浅草を指定するとおおむね好評だからだ。
気の合った仲間と飲んでいると
ついつい時間を忘れて飲みすぎてしまう。

21時以降は食べものを
取らないように心がけているのだが、
ごくまれにつき合いで口にすることもある。
宵っ張りの友人たちが深夜に
小腹を空かせたとき、
連れ立って訪れるのが合羽橋通りの「豚八」。
国際通りと合羽橋道具街を結ぶのが合羽橋通り。
「浅草今半」の角を曲がってすぐ左手、
どぜうの「飯田屋」のはす向かいにある。

「豚八」の最大の魅力は年中無休の24時間営業。
1年365日、いつ出掛けても店は開いている。
浅草においてこれは大変なことだ。
料理は洋食が主体だが、
冷奴や煮魚に、すき焼きなども提供している。

さんざっぱら飲んだあと、
真夜中にたどり着いたときは
よせばいいのに、さっそく仕上げのビール。
つまみは懐かしさあふれるチーズハムカツだ。
そして腹っぺらしのために注文するのが
ナポリタンかオムライス。
そうあちこちで食べるメニューではないものの
この店のナポリタンは東京随一の太鼓判。
以前は訪れるたびにナポリタン一辺倒だった。
ケチャップやソースのバランスがいいのだ。
小海老が数匹入っているのも何気にうれしい。
それが最近、仲間うちではオムライスが
ジワジワと人気を集めだした。
ケチャップライスの炒め方が秀逸にして
薄焼き玉子の状態もよく、サラリと仕上がっている。

ずいぶん古いハナシになるが、
故伊丹十三監督の映画「タンポポ」で
食べ際にオムレツをナイフで開く
オムライスが紹介されてから
トロトロ玉子のタイプが
肩で風切るようになってしまった。
炒飯でもピラフでも炒めライスは
ベチャッとさせず、適度なパラパラ感がほしい。
せっかく上手く炒まったライスに
ドロリと半熟オムレツをかけるのはもったいない。

真夜中の浅草の人種は千差満別。
「豚八」の客層にも風俗業の関係者が
いるかと思えば、そのスジの人間もいる
それでも浅草からは新宿のような
底知れぬ不気味さはまったく感じられない。
これもまた、観音様のご利益だろう。

 
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2007年3月6日(火)

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