「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第175
上海帰りのピッグ(豚) (その1)

およそ月に1度の割合で開催される飲み会がある。
多くても10人ほどのメンバーが集まるのは
神保町のおばんざい屋「やまじょう」。
おばんざいと言ってもすぐに思い浮かぶ
京風のそれではなく、東京風の惣菜が大皿に並ぶ。
もっとも女将のM子さんが茨城県土浦の出身だから
霞ヶ浦や筑波山の色濃い南茨城風だろうか。
てらいのないオフクロの味がウリである。

その名も「やまじょう会」と称する飲み会の
顔ぶれがほとんど固定されて、人数が増えないのは
10人以上になると、店に入りきれないため。
カウンター席だけの小体な食事処なのだ。
この狭い空間を娘のM由子と2人だけで切り盛りする。
昼間はガーデナーとして働くM由子は
料理に手を染める暇も腕前もまったくないので
ほとんどの物事を取り仕切るのはM子さん。
ただし、店のスペシャリテの玉子かけごはんだけは
M由子の発明でこれが、まいう〜!(第14回参照)

その夜も2名のゲストを迎え、集結したのは10名。
高校時代の同期生・O田切クンなんぞは
数年前に別れたカミさんを同伴して現れた。
「別れても好きな人」というんじゃなく、
今は理想的な友人関係にあるのだそうだ。
この元カミさんも同じ高校の出身者。
クラスが違って口をきいたことはなくとも
面立ちはなんとなく覚えている、
願わくば、将来二人が仲の良い茶飲み友達にでも
なってくれたらそれが一番いい。

スーパドライの中瓶のあとはワインでいく。
たまたま隣りに座られた「やまじょう会」の長老格、
通称・大富豪のS崎さんも大のワイン好き。
ほかの連中はてんでに日本酒や焼酎をやっているので
ボトルをシェアするに、隣り同士は好都合だ。
赤ワインにピッタリのつまみが
最後に出されたりもして2人で2本をカラにした。
どちらも造り手はドミニク・ローラン。
単一畑でない大衆的なブルゴーニュと
ちょいと贅沢してニュイ・サン・ジョルジュの1級畑。
後者は前者の3倍の値付け、これは致し方なし。
ワインにピッタリの肴というのが実は
上海帰りのピッグなのだが、
これはのちほど詳しく説明したい。

さてさて、自慢の大皿料理の数々。
黒胡麻で和えた鯖の大葉巻き。
真鯖を使っても料理名は胡麻鯖だ。
女将は青背の魚の扱いがとても上手。
蛸と胡瓜と独活の和風サラダ。
三者の相性がとてもいい。
蛸と胡瓜ならイタリアンでもおなじみだが、
独活が加わることによって、純和風に様変わり。
小槍烏賊と分葱のぬた。
烏賊の歯ざわりが最高で浅草の鮨店、
「弁天山美家古」の煮烏賊を彷彿とさせる
鳥砂肝と茄子のピリ辛炒め煮。
これは会の幹事のA子嬢の好物につき、毎度登場。
確かにこういう料理が一品入ると
目先が変わってよろしい。
料理はまだまだ続き、今日のコラムもまだつづく。

           =つづく=

 
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2007年3月2日(金)

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