「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第178回
ちり鍋対決 ひげ鱈VS鮟鱇

おそれ入谷の鬼子母神、びっくり下谷の広徳寺。
今は練馬に移転したその広徳寺が
関東大震災で消失するまであったのが下谷。
現在の台東区役所付近にあったそうだ。
下谷にちり鍋の旨い店があると聞いて
食べ歩き仲間を誘い、4人で出掛けた。

今年は暖冬の影響で鍋物用の
食材の売れ行きがサッパリ。
昨年末に猛威をふるったノロウイルス騒ぎの
張本人にされてしまった牡蠣なんぞは
Wパンチで悲惨極まりなかった。

鍋は寄せ鍋よりもちり鍋が好き。
ポン酢とおろしで味の濃淡の調整がきき、
変化を楽しめるちり鍋は飽きがこないのがいい。
寄せ鍋は具材が豊富でも味が単純でつまらない。
ちりでは河豚よりも鱈が好き。
鮟鱇はあまり好まず、目抜け(あこう鯛)には目がない。

地下鉄日比谷線入谷駅から歩いて2分、
「双葉」の暖簾をくぐる。
カウンターに5席ほど、座敷にはテーブルが2卓。
雑然とした店内は女将が1人で取り仕切る。
主人は2階の調理場にいるようだ。

壁の品書きを見上げると、刺身の品揃えが実に多彩。
その中から平目・かつお・ツブ貝を選んだ。
平目はかなりの厚切りにニセわさびで
いささか鼻白んだが、ツブは上物だった。
うれしいのはリクエストしたら
かつおに生のにんにくスライスを添えてくれたこと。
この時期のかつおにはほとんど脂の乗りが見られず、
それが却ってありがたい。
端麗な美味に、ついお替わりをしてしまった。

「双葉」は、ひげ鱈ちりの専門店。
冬場には鮟鱇ちりも食べられ、当夜は鯛ちりもあった。
ひげ鱈と鮟鱇を食べ比べようと、2人前ずつ注文する。
細かく切った出し昆布入りの鍋が煮立ってくると、
まずはひげ鱈のアラから投入してゆく。
しばらくして上身、そして春菊と絹ごし豆腐。
ポン酢にもみじおろしときざみねぎを落とし、
煮えるそばから口元に運ぶと、
鱈とひげ鱈は似て非なるもの、食感がまったく異なる。
ひげ鱈のファイバーのほうがキメ細かい。
この店では鍋の最後を生そばで締めくくる。
うどんはありきたりだが、そばというのは珍しい。
しかもこれがなかなかイケてしまうから驚きだ。

鍋を代えて今度は鮟鱇ちり。
ヌメヌメと光る切り身が鮮度の良さをうかがわせる。
見た目は断然、鮟鱇のほうに分がありそうだ。
ザクはひげ鱈に同じく、春菊と絹豆腐。
いざ味わってみると、部位によって食味はまちまち。
胃袋などはガブリと噛みついてみたものの
なかなか歯が立たない。相当な噛み応えだ。
こちらの鍋は玉子を割りほぐして雑炊で仕上げた。

さあて、ひげ鱈VS鮟鱇の勝敗の行方は?
競馬に例えてみれば、
2馬身ほどの差をもって、ひげ鱈の勝利。
それもそのハズ、鮟鱇に軍配が挙がるのだったら
この「双葉」、鮟鱇ちり専門店に変身していよう。

 
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2007年3月7日(水)

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