「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第181回
「バードランド」から独立した焼き鳥屋

雑誌・週刊現代から依頼のあったミッションは
東京都内の焼き鳥・焼きとんの専門店から
特筆の十数軒をピックアップせよという指令。
吟味を重ねて選出を終えたものの
未訪店のリストに気になる店が1軒あった。
その名を「ファンキーチキン」という。
すっとぼけた店名が、おかしみを誘うことしきり。

所在地は京王井の頭線浜田山。やれやれ遠いなぁ!
それでも気になりだすと看過できない性格、
「大利根無情」の平手造酒ではないが、
ここは一番、行かねばならん。
若い読者のために解説しておきますと、
造酒は「ぞうしゅ」ではなく、「みき」と読みます。
造り酒屋のことではなく、やくざの用心棒に
落ちぶれ果てた北辰一刀流の使い手なのです。
機会があったら三波春夫の唄う
「大利根無情」をぜひ聴いてみてください。
曲も詞も、セリフまでも
昭和の歌謡史に燦然と輝く名曲ですから。

池尻大橋で所用を済ませた土曜の夜。
渋谷で乗り換え、意図的に浜田山を乗り過ごし、
何年ぶりかで訪れる久我山に下り立つ。
30分ほど駅周辺の飲食店をチェックして
再び電車に乗り込んだものの
人身事故のため、隣りの富士見台でストップ。
運転再開の見通しが立たぬのならばと潔く、
そこからスタスタ歩き出した。
途中、高井戸駅直下の環状八号線を
越えてからが厄介なのは承知の上、
20分ほどで「ファンキーチキン」に到着する。

焼き場を取り囲むように
設置されたカウンター席だけの店だ。
焼き手が店主、アシストするのが奥さんだろう。
店主は有名高額店「バードランド」の出身と聞いた。
生ビールがサントリーのプレミアムモルツしかない。
これならすぐ近所の居酒屋「和田屋」で
サッポロ黒ラベルを飲んでおけばと
舌打ちするも、あとの祭り。
ところが相当歩いたせいか、あおるように流し込むと
そこはやはりビールはビール、素直に喉が喜んだ。

焼き鳥の注文は1本からOK。
品書きのソリ(もも付け根)や
ペタ(ボンジリの根元)を見て、この店が
「バードランド」の流れを汲むものと察せられる。

つくね・ハツ・レバー・砂肝・しそ巻き・ソリ・
わさび巻き・梅巻き・みょうがと続けて
よかったのはハツとソリ。
ともに食感が極めて快適なのだ。
逆にいけなかったのは「巻き」と名の付く連中。
わさび巻きのニセわさびが哀しい。
梅巻きは出来合い風の梅ペーストに細切りの大葉。
しそ巻きも心なしか貧相だった。

焼き鳥以外のつまみ類の健闘ぶりが意外。
泉州岸和田の水茄子がこの時期にもう品書きに。
親子丼のあたまは、ほぼ「バードランド」のレベル。
手で細く割いたささみの風干しは
スルメのようで、あまり感心しなかった。
「ファンキーチキン」を総合評価して
週刊現代の特集における最優良店の仲間入りには
まだまだ及ばないという結論に達した。

 
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2007年3月12日(月)

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