「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第184回
池波正太郎御用達の中華料理店

銀座通り(中央通り)にある3軒の
書店にはときどき足を運んでいる。
一番の馴染みは8丁目の福家書店。
その次が5丁目のブックファースト、
そして4丁目の教文館となる。

ブックファーストはコアビルの階上にあって
エレベーターに乗るのがわずらわしいが、
入店さえしてしまえば、居心地はとてもいい。
さもないと路面店ではないから
集客に苦労することになるだろう。

このギンザコアビルには
多くの飲食店が入居していて
行ってはいけない有名イタリアンの
「エノテーカ・ピンキオーリ」、
バランスのとれた和食店の「いらか」など
数ある中で、ちょくちょく訪れるのが
最上階にある広東料理店の「楼蘭」。
故池波正太郎翁が映画試写会の帰りに
たびたび利用したのもこのお店。
ビールを飲みながらの焼きそばや
シューマイがお好みだったようだ。
春巻なんぞも召し上がられている。

「楼蘭」で一品選ぶとすれば五目そば。
麺は高級中華料理店のお約束通りに
細めストレートのしなやかなタイプ。
この手の店で太麺というのは
まず見かけることがない。
暗黙の了解がなされているが如くだ。
これをやや固めに茹で上げて
じゅうぶんにコシを残しておいてくれる。
スープは醤油ベースのまろやかな味付け。
化学調味料をほとんど感じさせない。

五目そばの品名通りに、具は多種多彩。
焼き豚・鶏胸肉・鶏レバー・小海老・椎茸・
竹の子・小松菜・白菜に百合の蕾まで入って
数えてみると、実質は九目そばであった。
山吹色の百合の蕾がチャーミングなアクセント。
レバーは背肝だろうか、独特のコク味がある。
椎茸や小松菜の下味にも丁寧な仕事が施されていた。
銀座で食べられる中華麺ではトップクラスの太鼓判。

その日はたまたまクリスマスイヴ。
夕闇迫るたそがれどきだったが、
早い時間からかなりの数の客が詰め掛けていた。
場所柄、中年&熟年のデート、
あるいはクラブの同伴が目立ち、
若いカップルの姿はほとんど見かけない。

本格的なディナーを楽しむ際のオススメ料理は、
活海老の丸茹で、鶏肉の紙包み揚げ、
ミネラル野菜の炒め、蟹肉炒飯といったところ。
広東料理店だけに、北京ダックはそこそこの出来映え。
珍しさに惹かれたすっぽんの醤油煮込みは
惜しいかな、一流和食店のレベルには達していない。
この料理は、あえて注文するにあたわず、
見送るのが賢明というものだ。

 
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2007年3月15日(木)

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