「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第185回
銀座のスペインバルにも 当たりがあった!

常々、不満を感じていたことがある。
ここ数年のスペインバル・ブームに乗って
数多くの新店が都内各地にオープンしたが、
真っ当なところが極めて少ない。これが不満の種。

銀座エリアにもたくさんのバルが誕生した。
でも、そのほとんどが残念なことにハズレ。
小ジャレた内装や雰囲気で若い女性の
気を惹くことばかり考えているから
肝心のワインや料理がおろそかになる。
これではまったく本末転倒、
もしもスペイン人が訪れたら
かなりの違和感を抱くに違いない。

銀座松坂屋の裏手、地下1階にある「CadiZ」。
入り口の前を通り過ぎても
気が付かないほど目立たぬ店なのだが、
たまたまその夜はメニューボードに目が留まった。
イノシシのプランチャなる1皿が気になったのだ。
プランチャというのはいわゆる鉄板焼き。
ふ〜ん、猪肉の鉄板焼きか!
たまたま今年の干支でもあるし、
その夜は夕食を取る店もまだ決めていない。
友人と2人で軽くつまみながら飲もうと
思っていた矢先のこと、ただちに合意に達した。

赤ワインはリオハ産の
エル・コト・クリアンサ'03年(3675円)。
注文したタパスはボケロネス(ひしこ鰯の酢漬け)・
小海老のアル・アヒーヨ(にんにくオイル煮)・
ムール貝の漁師風といったところ。
どの皿も丁寧に作られていて、味もなかなか。
エル・コトもスパイシーなわりに
落ち着きも備えて、CPは高いものがあった。

続いて登場したイノシシのプランチャも
肉質よろしく、滋味もじゅうぶん。
おそらく南伊豆あたりの猟師に
ズドンと撃ち抜かれたものだろう。
イノシシはここ数年、スペインバル同様、
急速に生息数を伸ばしていて
農作物を荒らし、深刻な被害が出ているという。

タパスもメインもそれぞれに美味しく、
それならばと、イベリコ豚のプランチャも追加して
とても軽くつまむ程度では収まらなくなった。
結局、その夜は「CadiZ」に長逗留と相成る。

2ヶ月ほどしてウラを返すと
イノシシはすでにメニューから姿を消していた。
この日、目を惹いたのは豚耳とレンズ豆の煮込みと
牛テールのシェリー酒煮込みの2種類の煮込み料理。
どちらもエル・コトの渋味にピタリと寄り添ったが、
すき焼き風の風味が立ち上る牛テールのコク味が勝った。

それでも本日のベストは牛テールではない。
タパスにしては手の込んだフランス風の前菜が
とても魅力あふれる1皿だったのだ。
その名も小海老とエスカリバーダのミルフィーユ。
トマトは使わぬが、ラタトゥイユに似た
野菜の炒め煮がエスカリバーダ。
それに半生の小海老が重なるミルフィーユ仕立て。
下手なフランス料理屋が
シャッポを脱ぐかと思わせるほどの逸品だった。

 
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2007年3月16日(金)

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