「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第188回
生にんにくの誘惑 (その1)

毎年、終戦記念日が近づくと
時の首相の参拝が取りざたされる九段の靖国神社。
その南側を走る靖国通りを横断してすぐ裏手、
日本そば屋の「大川や」がある。
開業間もない頃、散歩の途中に見つけて以来
ずっと気になってはいたが、
ついぞ訪れる機会がなかった。

とある平日の夕暮れ。
九段に近い麹町にて、講習会に出席の予定。
19時スタートということなので
その前に「大川や」で軽く腹ごしらえを決め込んだ。
17時半に暖簾をくぐると
スタッフはまだテーブル配置の真っ最中。
それでもテキパキと片付け、中へ招き入れてくれた。

せいろか粗挽きをツルツルッとやるつもりが
どうしても品書き全般に目を通さずにはいられない。
まずは酒肴の部を念入りにチェック。
その間、間が持てないので
ついついビールを頼むことに。
あいにくエビスの生しかなく、しぶしぶ注文。
ことあるごとに書き連ねているのだが、
鮨屋とそば屋のエビス偏重には嫌気が差している。
どうしてこんなに重々しいビールを
あっさりすっきりの食べものを提供する
鮨屋やそば屋が出すのだろう。
客それぞれに好みの分かれるところだから
エビスがイケないとは言わない。
エビスしかないのが、イケないのだ。

酒肴のラインナップはかなりの充実ぶりを見せている。
芯取菜と油揚げのおひたし、菜の花の辛子和え、
モロッコ隠元の胡麻和え、これが一律500円とお手軽。
しかも3点セットだと、割安価格の1200円。
天ぷらは、白魚・穴子・小海老かき揚げのほかに
ふきのとう・こしあぶらが主役の春野菜盛合わせも。

せっかくビールを飲んでいるのだから
せめて酒肴を一品試してみたい。
悠長に天ぷらをつまんでいる時間的余裕もないし、
定番の板わさか玉子焼きでおとなしく収めるか。
ふむふむ、うるめいわしに身欠きにしんもあるわいな。
思案をめぐらせながら、別冊の品書きを手に取ると
本日のオススメ欄に、初がつお土佐造りを発見。
これにはググッときて、いきなり食指が動いたが、
「いや待て待て、かつおとくれば日本酒か焼酎が
 ほしくなる、ここは我慢のしどころだ」
自分で自分を説得しておき、野沢菜に決める。

ところが人生一瞬先は闇、
何が待ち受けているか判らない。
オーダーを取りに来た接客係のお兄さんに
「野沢菜」と言うつもりが
舌が勝手にすべってしまって
「かつおの土佐造り」と告げてしまった。
もうこうなったら自制心などあったものではない。
「にんにくありますよね?」
「ええ、おろしましょうか?それとも、、、」
「薄くスライスしてください」
これから人と会うことになるやもしれぬのに
生のにんにくを口にするなんて、、、

         =つづく=

 
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2007年3月21日(水)

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