「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第195回
昭和の匂いのカツレツとラーメン (その1)

東京に住む者にとって都内各地から
由緒ある町の名前が消えてゆくのは寂しい限り。
そんな状況下で千代田区神田や
中央区日本橋には往時を偲ばせるクラシックな
町名が点在しているのが好ましい。
東京23区をザッと見回してもほかには
新宿区の市谷・牛込・神楽坂・江戸川橋の一郭が
辛うじて名残りをとどめているばかり。
味気ないことおびただしい。

日本橋蛎殻町。
グルメストリート・甘酒横丁を擁して
老舗の鮨屋・豆腐屋・洋食屋・すき焼き屋・
しゃも鍋屋などが並ぶ日本橋人形町と
東京シティターミナルのある箱崎町に
挟まれるようにして存在するのが蛎殻町だ。
人通りの少ない寂しい町で、飲食店の数も多くはない。

蛎殻町にやってくるのは「日勝亭」で
洋食を食べるときくらいのものだ。
コンパクトなメゾネット・スタイルの店内には
レトロな空気が立ち込めている。
昭和の匂いの染み付いた洋食店は
せせこましい1階よりも、2階席が断然落ち着く。
一番人気の日替わりランチが820円とお食べ得。
とある日はヒレカツと白身魚フライの盛合わせ。
ヒレカツにはドミグラ、魚フライにはタルタルを
添えてきて、手抜きのない几帳面な仕事ぶりだ。

チョコレート色のドミグラソースにパンチがあるから
相性のいいロースのポークカツを注文することが多い。
コンソメスープ・小サラダ・ライス付きで950円。
何の変哲もないスープはうれしくないが、
手造りのサラダ用ドレッシングがとてもよく、
硬めに炊かれたつややかなライスも好感度大。
特にドレッシングは大好きなタイプ。
初めてドレッシングになじんだのは
学生時代にアルバイトをしていたTPホテル。
「日勝亭」のはそのホテルのものにそっくりなのだ。
ヴィネガーの酸味とサラダ油のコク味の
バランスが取れていて、余計な雑味がないのがいい。

肝心のカツレツは豚肉とパン粉をつなぐ
溶き玉子&小麦粉がやや厚めなれど、
サックリと揚がっていて香ばしい。
いかにも昭和の洋食カツレツといった匂いも立ち上り、
とんかつ専門店のそれとは一線を画している。
そこが何とも言えずにけっこう。

ただただ残念なのは、付け合せの3点セット。
にんじんのグラッセは煮すぎでトロトロ、
いんげんのソテーは炒めすぎでヘナヘナ、
じゃが芋のフライは揚げすぎでパサパサときた。
出来合いの冷凍ミックスベジタブルを
使われるよりずっとマシだが、
せっかく丹念に作り分けするのだから
今一歩のデリカシーがあるとなしでは大違い。
ぜひ改善してほしいところだ。

この界隈、夜はみな閑古鳥という店が多い。
「夜のおすすめメニュー」を眺めていて思った。
オニオンスライス(320円)、
ほうれん草のバター炒め(370円)、
いかリングフライ(340円)あたりをつまんで
居酒屋代わりに利用するのも悪くはないぞ!

         =つづく=

 
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2007年3月30日(金)

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