「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第196回
昭和の匂いのカツレツとラーメン (その2)

蛎殻町の洋食店「日勝亭」で昼食を済ませたあと、
すぐ近くのロイヤルパークホテルのカフェで
くつろぐことがあるのだが、
ある晴れた午後、ホテルへ向かう途中に
とてつもなく古びた中華料理店に遭遇した。
今どき、まだこんな店が残っていたとは!

中華料理店と言っても、ここ十数年の間に
雨後の筍のように増殖してきた中国人の
シェフによる点心やら担々麺やら麻婆豆腐を
比較的廉価で提供するタイプの店ではなく、
昭和20〜40年代には、どんな小さな町の
どんな小さな商店街にも必ず1軒はあった
ラーメン・タンメン・餃子に
炒飯・野菜炒めが主力メニューの
典型的な町の中華屋さんだ。

「来々軒」というごくごありふれた店名が
いかにもそれらしくていい。
店先に順番を待つ客のためのベンチが1つ。
入り口のガラス戸越しに中の様子をうかがうと、
13時を回っているのに、かなりの混み具合。
カウンターもテーブル席もほぼいっぱいだ。
ただし、なぜか女性客は1人もいない。

入り口そばのレジに立っていた
店のオバさんにしばらく待つように言われ、
ベンチに腰掛けること数分、ほどなく案内される。
へぇ〜っ!
中はまさしく「三丁目の夕日」の世界じゃないか!
外観に昭和の匂いを嗅ぎ取っての入店だったが、
店内は昭和がもっと匂っておりました。
なんだかワクワクしてきたぞ。

品書きの種類が半端ではない。
隣りの客の注文品を盗み見すると
そのボリュームも半端ではない。
炒飯なんか他店の倍近くはありそうだ。
反対側の客のもやしそばもスゴい。
やはり盛りのいい肉野菜炒めや
ニラレバ炒めを食べている客も目立つ。

こういう店の初回に頼むのは大体がラーメン。
よしんば他のものを食べたとしても
基本となるラーメンを試していなければ、
必ず舞い戻ることになってしまうからだ。
金500円也のラーメンは小さめのドンブリに
スープと麺があふれんばかり。
スープは濃い醤油味。きざみねぎがプーンと香る。
全体に化調を感じるものの、まぁ許容範囲だろう。
細打ち・まっすぐ・色白の麺はやや茹ですぎ。
量が多いから、麺のノビも気にかかる。

具は厚切りのもも肉チャーシューとシナチク、
そしてこれまた厚切りの鳴門巻き。
チマチマもケチケチもしていないのがいい。
チャーシューなどは、いかにもあの時代の素朴な味。
やたらにピラピラとドンブリを覆いつくす
薄くてデカいのでは気分が出ない。

ラーメンブームと言われて久しいが、
煮干しだの豚骨だの、むやみやたらに凝ったのが
大手を振って歩く今の世の中、
古い人間には昔の匂いが
たまらなく懐かしいものでございやす。

 
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2007年4月2日(月)

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