「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第201回
桜吹雪の播磨坂 (その1)

東京に桜の名所は数々あるが、
文京区・小石川の播磨坂は
その中でも指折りの花見処のひとつ。
江戸時代に松平播磨守の上屋敷があったことから
播磨坂と名付いたゆるやかな勾配を持つ坂を
4列の桜並木が彩り、その美しさは例えようもない。

春日通りと千川通りを結ぶ半キロにも満たない
この坂は終戦直後、あらたな都市開発計画により、
環状3号線として生まれ変わるはずだった。
計画が中断されて穏やかな光景が
生き残ることになったのだ。

ここ数年、このオシャレな坂道に
オシャレなレストランが立ち並ぶようになった。
以前は鮨屋さんのほかはイタリアンが1軒、
ポツリとあるだけだったと記憶している。

「タベルネッタ・アグレスト」という店で
数年前の桜の時期に週末のランチを食べた。
アンティパストの盛合わせ、
あさりとかき菜のタリアテッレ、
金目鯛と帆立貝のボリート、
仔牛とプロシュートの重ね焼き、
プディングと桜花のジェラートと
食べ進んで、料理はまったく冴えない。

アンティに組み込まれた馬肉(桜肉)のタルタルと
ジェラートの桜花は季節に合わせたものだが、
どちらもデキがよろしくない。
タリアテッレは凡庸でパンチがないし、
金目も帆立も素材がよくない上に、
火の通し方も下手とあっては料理にならない。
仔牛もすでに穀物を食べ始めた若牛であった。
はっきり言うならば、ニセ仔牛ということだ。

桜の花を愛でることのできる窓際の上席は
割高の、しかも選択余地のまったくない
お仕着せコースだけしか受け付けてくれない。
奥まったテーブルの客たちのシンプルなピッツァや
トマトソースのスパゲッティが
うらやましくなってしまうのがなんとも皮肉。

そしてもっともヒドかったのが接客係の横柄な態度。
桜が客寄せパンダを勤めてくれてはいるが、
ほめるところがまったくないリストランテであった。
ずいぶん前のことを今さら蒸し返しても
仕方がないけれど、食べものの憾みはかくも恐ろしい。

今年は二度と同じ轍を踏むまいと、
慎重に下調べをした上で、再び播磨坂に出向く。
訪れたのはくだんの悪店の
すぐ左隣りにある「タンタ ローバ」。
同種の飲食店を隣りで開業するとは
真っ向から勝負を挑むと言うか、
ハナから喧嘩を売るというか、
いずれにしろここのオーナーは
相当な強心臓の持ち主だろう。
さて、この夜の首尾やいかに・・・・

      =つづく=

 
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2007年4月9日(月)

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