「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第211回
元大関霧島現る!

4月第1週のとある夜。
蛎殻町は日本橋公会堂内の日本橋劇場を初めて訪れた。
アトリエ新派の公演「明日の幸福」の初日に
ヒロインを演ずる石原舞子の応援のためだ。
そこそこの入りの客席には初日とあって
新派の二枚看板である水谷八重子&波乃久里子、
演出を手がけた石井ふく子、それにやはり
舞子の応援にはせ参じた松村雄基の顔も見える。
久里子&雄基は明治座の「忠臣蔵」の
マチネーを終えてきたばかり。

昭和29年に明治座で水谷八重子(初代)によって
初演されたホームドラマは今も錆びついてはいない。
随所に古き良き時代の日本の
さわやかな笑いがちりばめられている。
ぞんぶんに笑い、じゅうぶんに楽しんだ。

楽しんだのだが、それにしても新派の男優はみな
石部金吉のようなクソ真面目な役者さんばかり。
明治・大正の心美しい日本人像の再現という
金科玉条には大きくうなずくのだけれど、
あの時代にも跳ねっ返る輩は大勢いたわけで
役作りが画一的になってしまったきらいは否めない。

われわれ応援団の団員は
芝居をエンジョイすることもさることながら
そのあとの打ち上げもまた
芝居に劣らぬくらいの楽しみ事としている。
当夜の会場は隅田川の向こう岸、
両国駅前のちゃんこ料理屋「霧島」。
もちろんオーナーは元大関霧島こと現陸奥親方。
店の裏手には道をはさんで陸奥部屋がある。

当夜は「霧島」が「明日の幸福」のプログラムに
広告を載せてくれたお礼を兼ね、10人での来店。
ワイワイガヤガヤと座はおのずから盛り上がる。
ビールで乾杯のあとの芋焼酎はその名も霧島。
卓上に並んだ刺身盛り合わせや
手羽先唐揚げをつまみつつ、ちゃんこが煮えるのを待つ。

やはり餅は餅屋にして、ちゃんこはちゃんこ屋。
刺身や手羽はそれなりなれど、ちゃんこは実に旨い。
鳥ガラで出汁を取った薄い味噌仕立ての鍋には
鳥もも肉・鳥つくね・豚ロース肉・ヒモ付き小帆立・
小海老・真鱈・豆腐・油揚げ・マロニー・しいたけ・
えのき茸・もやし・長ねぎ・白菜・青梗菜の面々。

大皿に残ったサーモンやまぐろの刺身も
ついでとばかりに鍋に投入してしまい、
今は亡き花菱アチャコではないが、
「もうムチャクチャでござりますがな」状態。
ところがである。意外にもこれがまた旨かったのである。
酒粕こそないものの、サーモンのおかげで石狩鍋、
長ねぎはあるから、まぐろのおかげでねぎま鍋、
それぞれに即席の2つの鍋の出来上がり。

ここでホンモノの陸奥親方が
店に顔を出したものだからさぁ大変、
店内は拍手と歓声が渦巻くことと相成った。
現役当時と変わらぬイケメンに引き締まった肉体。
歳を取らない風貌にいささか驚いた。
うどんを放り込んで締めとしたが、これには不満。
コシのまったくない柔らかいうどんで
現役時代の親方のうっちゃり腰は
こんなにヤワではなかったハズだ。

 
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2007年4月23日(月)

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