「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第215回
何故か相性のよくないビストロ (その1)

浅草の雷門通りが国際通りにぶつかるところ。
以前は仁丹塔が立っていた場所のすぐ右側の角に
交番があって、そこから菊水通りが始まっている。
30年ほど前まではもつ焼きの「菊水道場」があり、
その店が通りの名前の由来となっている
非常に珍しいケースなのだ。

その菊水通りを歩んでゆくと
交番から順に、公衆トイレ、お寺の墓場と続いて
「ビストロKatori」なるフレンチ・ビストロがある。
自著「浅草を食べる」では高く評価をしたのだが、
2年後の「下町を食べる」では
評価を落として名店二百選から外させてもらった。

最大の原因は料理が出てもパンが来ないので
あらためて催促すると、接客のお嬢さん曰く
これから温めるので5分間待ってくれとのこと。
それなら注文時にパンのお伺いが
あってしかるべきなのでしょう。
その後、このコラムの読者の方から今ではすぐに
バゲットがサーヴされるようになったと聞いた。

ちょうど小唄の稽古の帰り。
兄弟弟子とともに、男2人が連れ立って久々の再訪。
店内は空席がいくつかあるものの
かなりの盛況ぶりを見せている。
生ビールは相変わらずのサントリー・モルツ。
ワインは白を飲みたいという相棒のため、
メイユール・ラ・ビシェットの
コート・デ・リュベロンをカラフェでお願い。
そのあとの赤はジェネラル・ルグランの
ジヴリー・シャンベルタン’03年。

聞いていた通りにバゲットはすぐに登場。
豚のリエットもトーストに乗ってスッと出されたが、
これは口慰みのアミューズ・グール。
メニューボードに厚岸産の生がきとあり、
一応、念のために真がきか岩がきかを確かめると
ウェイトレス嬢は返事に詰まって
いったんシェフのもとに退却。
引き返した彼女から真がきと聞いて注文した。
このとき鮮やかに思い出した。
彼女はくだんの「5分間待つのだぞ!」のお嬢さんだ。

きざみエシャレットをあしらった生がきに
レモンを搾り、白ワインと一緒に楽しんだあとは
三陸産エイのサラダ仕立てシェリーヴィネガー風味。
ハーブもふんだんに使った緑の生野菜の上に
ポシェしたエイが乗せられて見るからに美味しそう。
もともと好きなサカナでもあり、これには満足。
アントレとして、ほかに若竹の子のロースト、
豚足とベーコンのエテュヴェのオーダーも通してある。

ここでお嬢さんが再び登場。
「メインコースはいかがいたしましょう?」
確かにボードの右半分は主菜の名前がズラリ。
そしてこの店のポーションは前菜でも
皿によっては半端じゃないのが周知の事実。
「ウ〜ン、頼んだ料理のボリュームが判らないから
 あとで追加していい?」
こうでもしないと、食卓に残飯の山を築くことになる。
ところが彼女にこうたしなめられた。

            =つづく=

 
←前回記事へ

2007年4月27日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ