「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第216回
何故か相性のよくないビストロ (その2)

料理は気に入っているのだが、
いささか相性のよくない浅草の「ビストロKatori」。
この夜もアントレとしては調理に時間のかかる
若竹の子のローストと豚足のエテュヴェを待つ間、
ウェイトレス嬢にメインディッシュの注文を促され、
「あとでねネ」と応じたところ、こう切り替えされた。
「いいえ!メインは時間が掛かるので今頼んでください!」
いきなりNGを食らっちゃいました。

でもネ、お嬢さん!
お宅の料理は目の前に出されるまで
ボリュームの見当がつかないんですよ。
もう1度噛んで含めるように説明し直し、
やっとお引きとりを願った。
もっとも彼女のつぶらな2つの瞳には
不満の色がにじんでいたけれど・・・

はたして、名目上は前菜扱いの2皿は
かなりの量でガツンと来た。
まず若竹の子のローストは主菜さながら。
2人で分けてもかなりの食べ出があった。
だが、きざみベーコンとハーブバターのソースが
秀逸で淡白な竹の子に奥行きを与えてくれ、
すばらしい完成度を見せていた。
和食でもなく中華でもないフレンチに
竹の子の新たな魅力を教わった気がしたほど。

豚足とベーコンのエテュヴェも充実の1皿。
相当に脂っこい料理ではあるのだが、
それほどのシツッコさは感じられず、これも好き。
ガルニテュールの新じゃがとキャベツもたっぷりと
あしらったシヴレットが見た目にさわやか。

さてようやくお約束のメインディッシュなのだが、
上記の通りに直近の2皿がメイン並み。
これではもう重めの料理はお役ごめんとお許しを乞い、
これまた名目上の前菜の1つ、
リードヴォーとキノコのフリカッセをお願いする。
ことここに及べば、彼女ももう四の五の言う気配もなく、
素直な笑顔に戻っている。やれやれ。

この店のリードヴォーは以前にも試していて
食材の質、料理のお手並みともに
太鼓判を押していたから、あとは大船に乗った気持。
ジヴリー・シャンベルタンのグラスを傾けつつ、 
その出来上がりを待つ。

待つこと十数分。
フリカッセからは、いい匂いが立ち上っている。
仔牛胸腺肉とキノコのアンサンブルに
ハーブとクリームが寄り添うように重なり合って
いつの間にか、ナイフとフォークの動きもスピードアップ。

若鶏・仔牛・仔うさぎはクリーム仕立ての
フリカッセとの相性が実によろしい。
これが脂身の多い豚ロースや牛サーロインとなると
胃にもたれてしまっていかんともしがたくなるが、
フィレ肉ならば、豚でも牛でもいっこうに構わない。
ロシア料理のストロガノフなど、その好例だ。

1人9千円にも満たない会計には好感。
どうやらこの店との相性は
料理ではなく、サービスにあったようだ。
他店と比べて遜色があるとも思えないが、
人と人には持って生まれた相性があるもの、
けっして悪い娘じゃないのだから
責任の大半はJ.C.にあるのかもしれない。
気にするこはとないよ、お嬢さん!

 
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2007年4月30日(月)

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