「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第220回
ラーメンは本店に限る

最近、自分の人生では極めて珍しいことなのだが、
お役所めぐりに忙殺されている。
法務局・税務署・区役所・社会保険庁・都税事務所、
中には生まれて初めて訪れた場所も少なくない。
思ったよりも各役所の滞在時間は短いものだし、
係りの人たちもみな親切で丁寧なのはうれしい誤算。

それでもオフィスの異動届出書を
蔵前にある浅草税務署に提出しに行ったときのこと。
登記簿謄本を添付した上で届出を終えたらば、
今度は写しを田原町にある都税事務所に
提出しなければならないのだと言う。

「ハイハイ、そうでございますか」と
その足で向かったのだが、
そこでも謄本が必要なのだと言われた。
オイオイ、それなら税務署で教えてくれればいいのに。
気が回らなかったのかもしれないが、これはちと不親切。
再び法務局に出向かねばならなくなった。
異動届書だけは受け取ってもらい、
謄本はあとからの郵送でOKになったから
都税事務所に舞い戻る必要はなくなったけれど
お願いしますよ、ホントに。

異動届を提出するため蔵前から田原町に移動の際、
税務署のすぐそばの背脂系ラーメン店、
「元楽」の前を通りかかる。
何度も目にしてはいても入店したことはない。
銀座の三原橋と亀戸のサンストリートにある
支店は訪れているのが何とも不思議。
昼めしどきでもあることだし、
この際だからおジャマしようと暖簾をくぐった。

店構えから容易に察しがついたのだが、
古びた店内はなかなかにいい感じ。
「胡同」グループのように取って付けたような
レトロ感とは違う自然体が好ましい。
席がゆったりのカウンターも居心地がいい。

自販機で食券を買い求める。
元ラーメンは醤油味のコッテリ系、
楽ラーメンは塩味のアッサリ系でともに600円。
醤油と塩はどちらも同じくらいに好き。
ただ塩ラーメンはどの店にでもあるものではなく
2つ並べられるとついつい塩に走ってしまう。
楽ラーメンに決定して、半ライス(100円)も追加。

どんぶりの表面にはアッサリ系といってもかなりの背脂。
スープを一口すするとそんなにシツッコくもなく、
深い旨みとコク味を感じる。
「ややっ、こいつは銀座・亀戸とはまったくの別物だぞ!」
中細ややちぢれの麺もじゅうぶんにコシを残して
歯ごたえ、舌ざわりともに軽快。
麺をゆで上げるオジさんからは風格が漂い、
なるほどこういう御仁が旨いラーメンを作るのだ。
柔らかいバラ肉チャーシュー、甘い味付けのシナチク、
固ゆで玉子半個、そして焼き海苔の脇役も悪くない。

半ライスをそのまた半分に減らしてもらった
ライスにはしいたけと昆布の醤油煮が付いてきた。
これは出汁を取ったあとの亡骸の再生だろうが、
出来合いのナントカ漬けを出されるよりはずっといい。
かくして支店展開をしているラーメン店のラーメンは
本店で食べるに限ると、肝に銘じた次第なりけり。

 
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2007年5月4日(金)

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