「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第227回
「赤線跡を歩く」を片手に (その1)

大切にしている愛読書の1つに
赤線跡を歩く」(自由国民社・木村聡著)がある。
東京の吉原・洲崎・玉の井・八王子や
関東の船橋・横浜・横須賀・宇都宮などを中心に
中京・関西地区までもカバーした
旧赤線地帯を検証する優れたガイドブックだ。

今回初めて訪れた小田原の街も
紹介されているのをこれ幸いと、
愛読の書を片手に「その跡」を歩いてみることにした。
ついでに隣り駅の早川で長蛇の列に怖れをなして
食べ損ねた「味一」のラーメンの
替え玉探しもせねばならぬ。

駅前をスタートして間もなく、
商店街の入り口の角地に
「昇玉」なる古びた中華料理店を見つける。
昭和30年代そのもののサンプルケースにも
外からちょいとのぞいてみた店内の雰囲気にも
大いにそそられるものがあった。

焼豚とシュウマイと野菜炒めが
ステンレスのプレートに一緒盛りにされた
中華ランチなどはレトロ感漂って心惹かれる1皿。
ほとんどドアに手がかかったが、
あいやまだまだ、考え直せもう1度という
脳からの命令により、「昇玉」を迂回することに。
なおも街を南下して相模湾の方向に向かう。

その1分後、栄町に下ってゆく大通りの向かい側に
とんでもない外観を持つ店を発見した。
店先の大きな看板には「中華料理 日栄楼」とある。
とにもかくにも懐古をそそるその風貌は
先ほどの「昇玉」どころのハナシではない。
実際に目で確かめたワケではないが、
戦前の上海の街にでも迷いこんだかのようだ。

 ♪ 涙ぐんでる上海の 夢の四馬路の街の灯
   リラの花散る今宵は 君を思い出す
   何にも言えずに 別れたね君と僕
   ガーデンブリッジ 誰と見る青い月 ♪

思わずディック・ミネが唄った名曲
「上海ブルース」のメロディーが脳裏をよぎる。

「日栄楼」の佇まいを一見してしまったら
たとえ超満腹でも入店せざるをえないだろう。
幸いにも「早川漁港魚市場食堂」では
抑え気味に食べてきたから、こん平師匠ではないが、
J.C.のストマックにはまだ若干の余裕がございます。

外観に負けず劣らずの店内ではオバちゃんが2人、
かいがいしくテーブルの間を行き来している。
何はともあれまずはビール。
銘柄はキリンラガーでサイズは大瓶。
ついでに餃子(300円)といきたいところを
そんなには食べられないし、グッとこらえて
初志貫徹のラーメン(500円)を注文する。

グラスに注いだ2杯目のビールを飲み干した頃、
ほのかに煮干しの匂いが立ち上るラーメンが運ばれた。
どんぶりには、チャーシュー・シナチク・鳴門巻き。
そして一面に小ねぎのみじん切りが散っている。
食欲をそそる景色に喉を鳴らしつつ、
割り箸も鳴らしてみた、パシリ!

           =つづく=

 
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2007年5月15日(火)

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