「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第229回
野生の真鴨の鉄板焼き

浅草は浅草寺の門前。
蔵前・駒形方面からまっすぐ雷門に向かい、
左手に「並木藪蕎麦」を見ながら通り過ぎたら
左折したあたりにある「鷹匠 寿」は
知る人ぞ知る天然真鴨の専門店。
一応は「一見さんお断り」を建前とするが、
腰を低く構えて丁寧な予約電話を入れれば、
たいがいは入店OKとなるはずだ。

月に1度はともに食卓を囲む食いしん坊仲間の
お誘いに従い、総勢4名でボトル片手に訪れた。
実に数年ぶりのこと。ボトルというのは赤ワイン。
初めて予約した際に店主から
「ウチの鴨に合うワインは自分で持ち込んでネ」と
言われて面食らったものだった。

その夜の計4本は以下の通り。

 ネッビオーロ・ダルバ サンドローネ ‘04年
 プロデュットーリ・バルバレスコ '01年
 シャトー・デュアール ミロン ’01 年
 レ・フォール・デュ・ラトゥール ‘91年

もちろんすべて赤ワイン。

蒸し暑い夜に加えて
メンバーの1人が遅れたこともあり、
最初にビールをガブガブやってしまった。
突き出しの天豆と山ぶきの醤油煮をつまみに
中瓶を2本半ほど飲んだのではなかろうか。
これからボリューム満点の晩飯だというのに
いくらなんでもこれはやり過ぎだ。

20時前、4人揃ったところで
まず運ばれたのが恒例の軍鶏の焼き鳥。
いずれも大串だから食べ出がある。
塩焼きの砂肝にはすだちを搾り掛ける。
タレ焼きのレバーには砂肝とハツが
1片ずつ混ぜ込んである。
続いては、もも肉・手羽先・手羽元と
長ねぎの炒め焼き。

真鴨を食いにきたというのに
なんだってこんなに軍鶏ばかり出てくるんだろう。
ビールのガブ飲みのせいもあって
胃袋は早くも満腹感を覚えている様子。
半分は身から出たサビとは言え、
店側にももうちょっと考えていただきたい。

いよいよ七厘の炭火の上で店主自らが焼く
野生の真鴨の鉄板焼きの始まりだ。
この時期だから当然のことながら冷凍ものだが、
深紅というより、ドス赤黒い胸肉の輝きは
妖しい光を放っているのだった。
焼き上がったところを矢継ぎ早に大根おろしで
いただくわけだが、その旨いことといったら
「トゥール・ダルジャン」の上を行く。
赤ワインたちとのシナジー効果も
じゅうぶんに表れてきた。

でもね、何か満足感が中くらいなんだなぁ。
やはりこの店に来たら、初っ端から真鴨を味わいたい。
軍鶏の焼き鳥など、ありがた迷惑なのだ。
これからうなぎの蒲焼きを食べるってのに
さんまの蒲焼きをその前に出されても嬉しくないもん。

 
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2007年5月17日(木)

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