「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第238回
三社祭はエンコの華 (その1)

♪ エンコ生まれの 浅草育ち 
   ヤクザ風情と 言われていても
   ドスが怖くて 渡世は出来ぬ 
   流れ流れの 浮き寝の果てに
   義理にからんだ 白刃の喧嘩 ♪

高倉健主演の仁侠映画「昭和残侠伝」シリーズの
主題歌でおなじみの「唐獅子牡丹」だが
最後の「喧嘩」は「出入り」と唄う。
それではアタマの部分の「エンコ」はなんだろう?
これがお判りの方は相当の浅草通、
あるいはそのスジの御仁ということになる。

新宿の「ジュク」、池袋の「ブクロ」は
子どもでも知っているが、上野の「ノガミ」となると
何のことやら?の人のほうが多いはずだ。
これは上野をひっくり返して野上と読んだわけ。

明治6年、ときの東京府は上野や芝とともに
浅草を公園に指定した。世に言う恩賜公園である。
この公園をまたまたひっくり返して園公。
これがエンコウ→エンコとなったのだが、
ヤクザというものは
手本引きや丁半博打の盆茣蓙(ぼんござ)でも
世話女房が酒肴を揃えた卓袱台でも
とにかくひっくり返さなきゃ気の済まない人種らしい。

そのエンコの華と言えば「いの一番」に三社祭。
これを浅草寺のお祭りと思い込んでる人は
かなりの数に上るのだけれど、
実際は浅草寺のすぐ脇にある浅草神社のお祭り。
なぜって、お寺に神輿はございませんから。
毎年5月第3週の金土日の3日間が開催日に
当てられていて、今年は3日とも浅草に顔を出した。
祭りにかこつけて、この街に身を置くことが楽しい。

初日は小唄の帰りに、新仲見世を通って雷門方面へ。
ずいぶんコンパクトな神輿が出ているなと思ったら
仲見世の町内会のものだった。
担ぎ手に子どもたちも混じって
威勢のいいのとは違った趣き、これはこれでまたよし。

雷門のすぐそばの「カリッスィマ」なるトラットリアに
男ばかり小唄の兄弟弟子が3人揃った。
ついこの間まで「トリトーネ」を名乗っていた店だが、
大阪に同名のリストランテがあり、
クレームをつけられちゃったとのこと。
これはよくあることで、改名するのが正解だ。

生ビールのあとは
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・ゴレッリの
デューエ・ポルティーネ'98年(12000円)。
さすがにブルネッロはキャンティと比べて
当たり外れの少ない安定感が強みだ。
値段が値段だから、またそうでなければ困る。

前菜のインサラータ・ディ・マーレは
海の幸のサラダで、小海老・小槍いか・蛍いか・
あさり・ムール貝のサラダ仕立て。
それぞれの素材が良質だった。
古くは「トラットリア・マドンナ」を
名乗っていたこの店、シェフはずっと変わらぬから
料理のほうも変わらぬ美味しさを持続させている。

          =つづく=

 
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2007年5月30日(水)

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