「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第243回
小澤征爾と桂文珍

一見何の関係もないように見える2人だが、
実は小澤征爾と桂文珍は見掛け通りに
本当に関係がないのである。
ある店に2人の筆跡が並んでいただけなのだ。

5月末のとある日、日比谷に出掛けた。
宝塚劇場の星組公演を観るためだ。
演目は「さくら」と「シークレットハンター」。
総勢9人の観劇ツアーはオバ様ばかりが8人に
それを引率する哀れなJ.C.が黒一点。
超アンバランスなグループの誕生には
それなりの経緯があるのだけれど、説明は省く。

しかしこうなると、両手に花どころではない。
なんかヨン様ツアーの添乗員にでもなった気分。
幸か不幸か、オバ様の中には美形が
少なくないのがせめてもの救いで
多少は気が紛れるというものだ。

ちょうど昼メシどきで、開演前の腹ごしらえに
銀座・日比谷界隈を物色する。
食事処「いわさき」のカツ煮定食もいいし、
和食の「むとう」で焼き魚も悪くない。
「泰明庵」か「銀蕎麦國定」で
軽くツルツルッと済ませる手もある。

ふいに中華の「慶楽」の叉焼飯のことを思い出し、
こりゃ懐かしいわいと、ガード沿いを店に向かった。
まだ紅顔の美少年の頃、近所の雀荘のお兄ちゃんに
この叉焼飯を買いに行ってもらったものだ。
出前をしてくれないので、テイクアウトを頼むしかない。
白飯の上に叉焼とほうれん草が乗っているだけだが、
麻雀のプレイ中には食べやすくていいのだ。

「慶楽」への道すがら、数十メートル手前に
「芳蘭」の小さな袖看板を見とめる。
おお!ここのラーメンにもお世話になったなぁ!
まだ東京の街を魚介系だの醤油とんこつだの
やたらにうっとうしいラーメンが侵略していない頃、
サッポロラーメンはちょっとしたブームになっていた。
即座に方針転換、細い階段を地下に降りてゆく。

店内の変形カウンターとテーブル席は昔のまま。
おそらく17年ぶりではないかいな。
醤油と塩が1000円で、味噌とカレーが1100円。
深夜ならともかく、けっこうな値段ではないか。
それでもお昼の11時から14時の間は
100円引きに加え、半ライスのサービス付きだった。

バカデカいどんぶり(大盛りではない)で
カウンター越しに登場した塩ラーメンには
肩ロースのチャーシューに
シナチク・青ねぎ・うずらのゆで玉子。
中細・ややちぢれ・真っ黄色のシコシコ麺の量は
器が大きくとも、むしろ少なめなくらい。
スープはかなり塩気が強いが、深いコクがあり、
懐かしさも相まって美味しくいただいた。

店内は有名人がサインした色紙だらけ。
ふと頭上を見上げると、芦屋雁之助や桂文珍、
竹脇無我や中山仁に混じって、小澤征爾のものも。
「シューマイ、ラーメンともにうまし ‘91」とあった。
当時ボストンに居た彼の里帰り中のことだろうが、
J.C.が最後に訪れたのもちょうどこの頃だ。
長い療養を経て活動を再開した名コンダクターの
活躍を祈るオバ様ツアーのコンダクターであった。

 
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2007年6月6日(水)

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