「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第244回
メシを食うには暗すぎる「オレキス」(その1)

西麻布の「ザ・ジョージアン・クラブ」から
鳴り物入りで独立したシェフが
白金に開いた「オレキス」を初訪問。
月に1度はテーブルを囲む4人組で出掛けた。
ロケーションは田町と恵比寿をつなぐバス通りが
白金高輪駅のある桜田通りを越えてすぐの左側。

ニューヨークから帰国したおよそ10年前、
三光坂下のマンションに一時期住んだので
この界隈には懐かしさを感じる。
当時は地下鉄もまだ工事中で
通勤には不便なエリアだったが、
今では高層マンションが立ち並んで光景は一変。
「オレキス」の数軒隣りにあって
深夜にはよくお世話になった
セブンイレブンもいつの間にか消えていた。

ソリッドな外観を持つフレンチレストランの
店内はそんなに広くはないものの
空間を上手に使って広さを実感させ、
少々トリッキーな造作になっている。
入り口近くには喫煙や携帯電話の使用が可能な
スペースも確保されていた。

テーブルに落ち着いたときに
まず感じたのはあまりにも暗いなということ。
おそらく銀座あたりのクラブよりも暗いだろう。
少なくとも料理の色合いが
ハッキリと見える明るさではない。
シェフは自分の皿に自信がないのだろうか。
あるいは生まれつきのネクラ人間だったりして。

サントリーのプレミアムモルツでのどを潤したら
速攻でシャンパーニュへ。
今宵のシャンパーニュと白赤ワイン各1本は
すべてワインフリークの相棒の持ち込みで
最初の「泡」は、A・ロベールの
ル・メスニル・トラディション’85年。
貴重な1本につき、一同揃ってグラスを
口元に運ぶ手がふるえ気味だ。
シャンパーニュはあまり好まないのだが、
このクラスになると通り過ぎたあともなお、
舌の上に残していく爪あとの深さがまるで違う。
アミューズはシェーヴルのスプーマをあしらった
冷たいアヴォカドのムース。

オードブルの前に早くも白ワイン。
バロン・テナールのル・モンラッシェ'71年。
'71年と言えば、フランスをはじめとして
欧州諸国を初めて訪れた記念すべき年、
感慨にふけりながら白ワインの最高峰をいただく。

間もなくサーヴされたパエリャ風リゾットには
帆立・あさり・つぶ貝・北寄貝・小海老に
黒&緑のオリーヴが散り、まるで宝石箱のようだ。
だが、見た目と味は別物。
穏やかな美味しさはボンヤリとした印象も残し、
わざわざフランス料理のシェフが
作る必然性というものを見出すことができない。
やはりリゾットはイタリア料理のシェフに
任せておけばいいのではないか。

           =つづく=

 
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2007年6月7日(木)

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