「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第251回
想い出の詰まったハンバーガー (その4)

航海士スターバックが登場する「白鯨」は
白鯨こと、モビー・ディックに片脚を
奪われたエイハブ船長の復讐の物語だが、
英国の詩人エドマンド・ブランデンが
英米文学における三大悲劇として
「リア王」、「嵐が丘」とともにこの作品を挙げている。

カンパラのハンバーガー・ショップ
「WIMPY」のお世話になったあと
ナイロビに引き返す途中の国境でトラブル発生。
ケニア出国の際、通貨の国外持ち出し規制に従い、
正直に申請して預けておいたケニアシリングの
返金を拒否されてしまったのだ。
貧乏学生にとってこれは痛恨の一大事。
この問題を解決するためにナイロビ市内の
当局に足を運ぶこと数回に及んだ。
独りではどうにもならず、
在ケニア日本大使館の現地人書記官のオジさんに
ずいぶんと面倒をかけてしまった。
オジさん、あのときの恩はけっして忘れないからね。

このとき英語の大切さを身をもって知り、
パリで仏語を習得する計画をコロリと方針転換。
空路ロンドンへと旅立つ優柔不断なJ.C.であった。
トラブルに見舞われずにすんなりパリに入っていたら
その後の人生、まったく違うものになっていたろう。
一世一代の人生の分かれ道に直面していたというのに
本人にはその自覚が微塵もなかったけれど・・・

冬を迎えようとしていたロンドンで
手持ちの金が底をつこうとしていた。
何か仕事を探さねばならぬ。
とある日の夕暮れ。
ウエスト・ロンドン・エアターミナルに近い
地下鉄のグロスター・ロード駅前広場に
浮かぬ顔のJ.C.オカザワの姿を見ることができる。
別に見たかないのは判ってますって。

ふと見やれば、広場の反対側にどこかで
見たようなレストランが1軒。
誘われるようにふらふらっと目の前の
オールド・ブロンプトン・ロードを渡り、
店の前に立つと、ウガンダで胃袋を救ってくれた
あの「WIMPY」であったのだ。

見上げれば、見慣れたロゴの袖看板。
ガラス張りの店内をのぞくと、さすがにロンドン、
カンパラの店舗とは打って変わって
エレガントな雰囲気に包まれている。
ハンバーガー・ショップというよりも
ハンバーガー・レストランだ。

ミルクティーでも飲んで行こうかなと
迷っていると、入り口近くのウインドウに
貼られたポスターが目に付いた。
何とそこには日本語で「スタッフ募集」とあったのだ。
地獄で仏とはこのことで
ウエイターならお手のものだし、
速攻で面接と相成りました。

          =つづく=

 
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2007年6月18日(月)

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