「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第253回
銀宝の天ぷらを食べる (その1)

住まいのある柳橋には江戸前天ぷらを
食べさせる店が2軒ある。
柳橋のたもとでコンクリート打ちっ放しに
建て替えられた「大黒家」と
総武線高架下で半世紀前と
変わらぬ姿のままの「江戸平」である。

「江戸平」は同じ総武線沿いに暖簾を掲げる
うなぎ屋の「よし田」とともに
昔と寸分たがわぬ佇まいを見せている。
成瀬巳喜男の名作「流れる」(昭和31年)では
両店がはっきりと映し出されているが、
看板の文字と位置くらいしか違いを見出せないほどだ。
田中絹代がたたずんだ総武線のコンクリートの高架も
往時とまったく変わらない。
一体どうなっているんだ柳橋という街は!

その「江戸平」が1年ほど前から
サービスランチを始めた。
店先の品書きで知ったのだが、
やや高めの価格設定が災いしたのかどうか
以前からあまり客の出入りを見掛けたことがない。
集客に苦労はしていても
住まいで商いを続けていられるのは
家賃の心配がないぶん気がラクだろう。

1500円の天ぷら定食がどのようなものか
物は試しと11時40分に入店すると先客はゼロ。
ほどなく近くの人形店勤務のオジさんが2人に
新入社員のような若者が3人の計5人連れが現れた。
これがまた奇妙なグループで
オジさん2人の会話は続くものの
若い衆3人組は終始無言で緊張気味。
年配者が話しかけてやればいいものを
そういう配慮はハナから持ち合わせない
オヤジたちとお見受けした。
大きなお世話かもしれないが、
こちらのほうが気を使っちゃうよ。
ジェネレーション・ギャップは如何とも、し難し。

目の前の天ぷら定食に集中することにする。
最初に中サイズの海老が2尾。
どうやらブラックタイガーのようだ。
いつもは食べてしまう尻尾が黒ずんで
これは食べる気になれないので残す。
食感は多少プリッとはするものの
海老本来の味にはほど遠い。
コロモはもう少しサックリ揚がったほうが好きだし、
胡麻油も増量してほしい。それも焙煎強めのヤツを。

次のきすはよかった。
サイズも立派でホックリと揚がっている。
これならワンランク上の定食や
夜のお好みのものと比べ、そんなに差がなさそうだ。
壁の天種を記した札に目をやると
興味を惹かれるものが3品。
稚鮎・銀宝・ふぐである。
このうちふぐは季節が外れているから、
虎ふぐなどではあるまい。
真ふぐや縞ふぐあたりの幼魚だろう。
6月半ばにして、今もなお銀宝か
よし、食べてやろ!

      =つづく=

 
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2007年6月20日(水)

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