「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第255回
神楽坂の罠 (その1)

フジテレビ系列のドラマ「拝啓、父上様」効果で
一躍脚光を浴び、急に元気になった感のある神楽坂。
ひと頃よりも確実に訪れる人が増えた。
週末などは中年・熟年の夫婦やカップルが
バックパックにスニーカーの軽装で
石畳の路地裏を闊歩している。
やはり粋な黒塀が日本人の心に訴えるのは
小さくないものがあるのだろう。

晶文社から出る次著の原稿締め切りが
6月末日に迫っている。
題して「J.C.オカザワの古き良き東京を食べる」。
以前にもこのコラムでふれたのだが
古き良き東京の名店二百選に加え、
二百選にあと一歩の優良店、
二百選にもれた有名店、
こんなときにはこの一軒、
総じて三百十数軒を紹介・批評するものだ。

古き良き東京となれば、
当然、日本橋・深川・浅草界隈が主力となるが
これは前作「下町を食べる」ですでに網羅した。
したがって次作がカバーするエリアは
古き良き東京の街々、引くことの下町ということになる。

神田・上野・本郷・谷中・根津・千駄木・
白山・九段などを紹介する中で、
神楽坂は最重点地域のひとつで
あることは疑いの余地がない。
実際この街を食べ歩いてみて
飲食店の数の多さ、その懐の深さにはかなり難渋した。
行けども行けども、尽きぬ店の数々。
時間も使ったが、お金も使った。
どうやら神楽坂の罠にはまってしまったようだ。

飯田橋駅脇の神楽河岸から軽子坂を上り、
イタリア料理の「ソリッソ」の角を左折する。
今度は1つ目を右折する路地は
古い日本家屋を活用した飲食店が
数多く立ち並び、そぞろ歩きも楽しい一画だ。

路地を入ってすぐ右側にある
「Stone Pavement」はカウンター6〜7席の
小さなバーだが、気に入りの店だ。
オーナーバーテンダーが独り奮闘していて
抑制された客あしらい、スキのない所作が
居心地をよくさせてくれるからだ。

今の時期なら最初の1杯はラムベースの
ダイキリかモヒートがいい。
甘さに飽きたらペルノーかリカールの水割り。
ガツンと行きたいときには思い切ってアブサン。
先夜はツレがショートカクテルの連続に
ついていけず、悪酔いしてしまい、
お店に少なからず迷惑を掛けてしまったので
近いうちにお詫びかたがた顔を出さねば。

「Stone Pavement」の先、
同じ並びにあるのがお座敷天ぷらで有名な「天孝」。
神楽坂に天ぷら店は非常に少ない。
需要に供給が追いつかないからだろうか
この「天孝」もすぐそばに
「新天孝」なる支店を開いたほどだ。
食べ歩き仲間が4人、本店のカウンターに陣取った。

           =つづく=

 
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2007年6月22日(金)

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