「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第256回
神楽坂の罠 (その2)

「天孝本店」1階の揚げ場にはわれわれ4人のほかに
初老の男性が2人の計6人、これで満席。
すでに先客は、かなりきこしめしている。
声が相当に大きく、会話がやかましい。
仲間の1人が耳打ちしてくれたところによると
初老の男性の片割れは大手外食産業の総帥だという。
まっ、世の中こんなものかもしれない。
おとなしく食事をする紳士では
大会社の社長にはなれないのだろう。
でもこれじゃ、大手外食ならぬ大声外食だよ、まったく。

ビールのあとは鹿児島の芋焼酎・龍雲のロック。
突き出し代わりに、才巻き海老のオドリが2尾。
小ぶりにつき、生のまま尻尾もいただく。
天ぷらは以下の順に揚げられた。

 才巻き4尾・すみいか・白魚3尾・たらの芽・
 しいたけ海老真丈詰め

ここで箸休めに
 海老味噌・じゃこ酢の物・才巻きカブト焼き2尾

再び天ぷら。
 銀杏3粒・ペコロス・きす・小柱&三つ葉の海苔巻き・
 才巻きの脚の素揚げ・穴子・谷中生姜

食事は
 芝海老&三つ葉のかき揚げとししとうの天丼・
 しじみ味噌椀・新香(大根・白菜・べったら漬け)
 メロン ほうじ茶

太巻き風の小柱&三つ葉の海苔巻きがよかったが、
残念なことにほかは何ひとつとして印象に残らない。

最初の才巻きで揚げ方が
タイプではないと直感したまま
最後まで引きずってしまった感じ。
千葉・竹岡産のきすなど、大ぶりな上に
フリッターのようなコロモをまとっていて
天ぷらを食べているような気がしない。
これは穴子にも言えること。

店主は猿楽町にあった名店「天政」の出身。
たまたまこの夜は「新天孝」のほうに
出張っていて、本店の揚げ手はその息子さん。
天ぷらコースは、税・サ込み1万7千円の1種のみ。
確かに食材は良質なのだが、
値段が値段だけに満足度も中くらい。
これが1万円に収まるのなら、納得もしよう。
会計は4人で8万円ちょうどだった。

路地をなおも進むと、同じ並びに
創作フレンチの「かみくら」がある。
黒塀に囲まれた趣きのある日本家屋の一軒家。
坪庭に臨んで食事を楽しめる設らいが
若い女性たちの人気を呼んで
予約の取りにくい店になっている。

料理を一口味わってみると
たちまち露見することだが、この日本家屋が曲者で
これもまた神楽坂の罠のひとつなのである。

           =つづく=

 
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2007年6月25日(月)

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